たかが世界の終わり

 もう随分時間が経っていて何を今さら思い出したようにと言われそうで最初から申し訳ないなとは思うのですが、「たかが世界の終わり」を観ました。

 オリジナルタイトルは It’s Only the End of the World で、もうタイトルが好みです。グザヴィエドランの新作ということで昨年の試写時から気になっていました。
 ジャンリュックラガルスの「まさに世界の終わり」という戯曲がベースにあるらしいのですが、僕はまず是枝監督の「歩いても歩いても」を思い出しました。都会に暮らす主人公が、実家に帰省するという内容だからです。歩いても歩いても、は確かある夏の日に、家族で実家に一日帰省する話だったと思います。どちらも一文で説明できてしまいます。本当にただそれだけの話なのです。心の中では「たかが息子の帰省」と名付けています。ドランさんには失礼ですが。
 僕も田舎出身の東京住まいですので、実家に帰省する大変さを身を以て知っています。交通手段を確保して、家族友人と予定を合わせ、寝床を確保し、食料を調達し、気象情報を確認し、現地の動物たちの様子を伺い、と実際のところとても大変です。
 ストーリーは簡素ですが、劇中ほとんどが人物のクロースアップと会話で構成されていてインティマシーの極致を感じました。人はこれをグザヴィエ節と呼ぶのでしょうか。映画におけるワイド、パンフォーカスという定型を破り、タブーを意図的に使って素晴らしい効果を出しています。写真でいうと50あるいは85mmのレンズ感で絞り開放といったところです。音楽とフレーミングにもさらに磨きがかかっています。
 フィルムの色合いも、フランスのペールトーンな田舎の家庭色と相まって、なんとも言えません。これは歩いても歩いてもでいうと、畳と味噌汁になるのかな。日本の田舎も美しいんですよね。
 そのようなことを考えているとだんだん帰省したくなってきました。畳と味噌汁、山と海。まだまだ世界が終わりませんように。

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