宇多田ヒカルの歌が光る

 宇多田ヒカルさんの新譜[Fantome]を聞いています。

 First Loveの衝撃から17年。当時、洋楽ロックかぶれの中学生だった僕は、英語と日本語がミックスされた大人な歌詞とそこに乗ってくるこれまでにないビートにやられ、こんなにかっこいい人がいるんだなぁと驚いた記憶があります。それも歌っていたのは、2、3歳しか違わない高校生くらいの子だったのです。デビューアルバムは今聞いてもさほど古さを感じず、逆に一回りして新鮮に思えます。
 新作は母をテーマにしたものです。様々なインタビューで本人が語っているように、初期とは対照的に日本語の言葉と音に重きを置いて、その美しさが光っています。離婚、再婚、出産という経験を経て、一人の人間のパーソナルな想いを掘り下げた結果、誰にでも伝わる普遍性を獲得した形で昇華されたのだと感じました。First Love同様、今回のFantomeも、リチャードアヴェドンの写真のようにタイムレスなものになりそうですね。
 「無期限活動休止期間中は、ほとんど歌わず普通のリスナーだった」という彼女が聞いていた音楽は、Rhye, Hot Chip, D’angelo, Atoms For Peace, This Mortal Coil, Julie London などで、ソフトだけどオーセンティックなところです。改めて辿ってみると、今回のアルバムに共通性を多く見出すことができます。Julie Londonの歌うCry me Riverなどは、かなりの宇多田感がありますよね。”宇多田にジュリー感がある”と言った方が正確なのかもしれませんが。
 写真にも触れておくと、今回のカバーはJulien Mignotというフランスの写真家が担当しています。ミュージシャンのポートレートを多く手掛けるベテラン写真家なのですが、初期はクラシック奏者の肖像を専門としていました。ジャケ写の上がりもブラックアンドホワイトで、なんというかすごくフランス的だと思います。どことなくAntoine D’agataの写真を連想させます。
 8年ぶりのスタジオアルバムということで、制作に関してはやはり長い年月をかけると良いものができるのかなと思い、僕も無期限活動休止に入ろうかと一瞬頭をよぎりました。しかし3秒後に、そもそも今そんなに活動してないことに気づいたので、もっと働こうと思いました。

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