ホテルの窓から見える景色が好きだ。
それがオーシャンビューでなくても、世界のどこかに確かに開かれているという点で、窓はいい。
何より窓はフレームで、それ自体が写真となる。僕は窓の外の景色と言うよりも、窓枠、カーテン、その他のそこにある何かを含めた景色が好きなのかも知れない。すなわち窓のある風景。
今までいくつもの窓辺を眺めてきたけれど、香港の窓辺は僕をいつでも旅の始まりへと連れ戻してくれる。
何も抱えずに、ザックだけ背負って何処かへ行こうと悶々としていたあの頃。窓枠ではなく香港という街がそのような初心の気持ちを喚起させるのかもしれない。
今回は町の外れに滞在しているので、なかなか抜けがある。それでもこの街でしかありえない密度で、繰り返されるテクノミュージックのように、ビルがビルがビルが窓のフレームを埋めてくる。
二、三日同じ場所に滞在して、その景色を見飽きたころ、それは新たな移動の合図だと思う。
しかし心のどこかでは、この場所にだらだらと留まっていたい。あるいはこのまま村(東京)には帰らずに、次の場所へと陽気なギャングたちと共にアルコホッピング、思うがままに移動してシルクロードを辿ってロンドンまで行ってしまいたい。そんな気持ちが見え隠れする。
でもそれでは旅人になってしまうから、村へ一度戻ることにしよう。そして、またしばらくしたら出かけよう。村人でもなく、旅人でもなく、僕たちが観光客であるために。
そろそろ移動の時間だ。
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