同じ50ミリでも、レンズの数だけ味がある

 サランラップを買った。ゴヤールのバッグではない、サランラップだ。そういうことをこんなところでいちいち報告するなよと言われるかもしれないが、仕方がない。どの世界においても報告はいつも一方的になされる。

 サランラップとクレラップは言わずと知れたラップ界の二大巨頭である。新製品で頻繁に競い合うわけではないが、カメラ界でいうニコンとキャノンくらいに日本での一位二位のシェアを争っていると思う。とても長い間。
 僕にはよく友人と、サランラップか、それともクレラップかという話に花を咲かせていた時代があった(幸いにもそのようなことを真剣に議論してくれる友人がいる)そのようなことを思い出したのも、僕がサランラップを買ってしまったことが全ての始まりだった。
 その前は、クレラップをつかっていた。僕が好んで使う22cmの50mモデルで、レンズで言うと50mm F1.4あたり、王道とされるところだ。手に優しい紙の刃、50mというずっしりくる重み、そしてクレ特有の少し粘りのあるポリ塩化ビニリデンフィルム。おそらくその友人と話ていた時から、僕はクレラッパーだったのだ。いや、その友人に感化されてクレラッパーになったのかもしれない。どちらだったかな。
 そしてクレラップが切れたので、写真家が気分転換にカメラを持ち変えるように、僕はサランラップを買った。
 最初は使用感の差異に戸惑いを隠せなかった。凍ったニシンの切断にも使えそうな鋭い金属派、現行版ライカのように甲高く響くカット音(それには確かに心地よさもある)、ハリはあるが粘りに欠けるポリ塩化ビニリデンフィルム。普通の人からすれば、気にならないほどの些細な違いかもしれない。だが同じ50ミリレンズでも、レンズの数だけ味がある。しばらく使ううちに、僕の中のラッパー魂が、こいつは何か違うと告げていた。特に朝、半分に切ったりんごを包んだその瞬間に。
 これらを言葉にして、歌にして、ヒップホップに乗せてラップできる力があれば、僕はここにわざわざ文章を認めなくてもよかった。だがあいにくそのような能力は持ち合わせていない。
 次はクレラップに戻す予定である。50mを使い切るのは随分先の話になると思うが、その時はまた報告いたします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください