はじめての腱鞘炎

生まれて初めて、腱鞘炎的なものになった。

今整形外科の待合室でこの文章を書いているのだけど、午前の診察も終わりかけで、ようやく人が少なくなってきた。カーペンターズのスーパースターが、安い打ち込みのアレンジで流れている。

二日前から急に右手首が痛みだし、タイピングもままならなくなった。ネットで調べたら、痛み方的にステロイド注射が必要だったり、手術が必要との文字があったのでひとり怯えていた。

これまでギターやピアノを激しく弾いたり、色んなスポーツをやってきたけど、腱鞘炎とは無縁だった。今回の原因も特にこれといって思い当たるものがない。こんなにも急に、自分の右手が使えなることに、ただ驚いた。

湿布と包帯を適当に巻いて、1日なるべく右手を使わないようにしていた。朝になると少し痛みは楽になっていた。包帯に対する突っ込みに「るろうに剣心みたいでしょ」と返したら、そんなこと言わずに早く「検診」してもらってこいという仕事仲間の言葉を思い出して笑った。

どうもこの整形外科は人気らしく、おじいちゃんおばあちゃんたちで溢れている。あまり見たくはないが、ネットのレビューを見ると名医と書かれ評判がいい。そのせいか1~2時間待ちが日常のようだ。

僕と同じく初診の人が、会計時に「2時間も待ったんですけど、初診でもそうなんですか?」と軽くクレームをこぼした。

看護師は「はい、順番通りです」と忌憚なく答えている。

カーペンターズの曲がその情景に見事にマッチした。カレンカーペンターの真っ直ぐな歌声は、初診、お得意様にかかわらず順番という公平さを最大限に讃えているようだ。(残念ながらその打ち込みBGMに歌は無いが)

お世話様です。と言いながらおそらく慢性的な関節炎で通っている常連客が次々と支払いを終えて病院を後にする。

そろそろ僕の番がくる。

保険証を渡して1時間半。待ってる間に書き終わらないかもしれないという心配は無用だった。

この腱鞘炎的なものが、慢性的なものでないことを願う。

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