何ミリのレンズを使うかは、その写真家のスタイルを決めると言っても過言ではない。
逆に言うと、普段使わない焦点距離をふと使ってみると、写真のスタイルを簡単に変えることができる。
先日、あるフォトグラファーと世間話をしている時に、焦点距離の話になった。
いわく、
「人間の目は、普段街を何気なく歩いている時は28ミリくらい、目の前の人と話しをしている時は50ミリくらい、特定のものを見つめている時は80ミリくらい」
になるという。
確かにな、と思った。
人間の視覚に近い焦点距離は50ミリくらいとされてきた。
だが彼が言うように、人間の視覚というのは脳と直結しているため、状況により変化し変換されていると考えることができる。
もちろん個人差もあるだろう。
なので、人間の視覚に近い焦点距離をむやみやたらに押し付けるのは、無意味なことのように思えてくる。
確かに、例えば50ミリの単焦点レンズをつけた一眼レフカメラを覗いて、モノを見てみると、ファインダーを覗いた時と外した時に、モノの大きさはさほど変わらないように見える。(レンズを通した方がほんの少し小さく見える)
そういう点で「人間の視点に近い自然な画角」などと表現されてきた。
しかし心身の状態により僕らの意識は、実はどの画角にも変化し得るし、また特定の領域に固定され得る。
僕は50ミリも35ミリも好きだが、だいたい35ミリくらいの感覚で世界を捉えているような気がする。
画角は狭くとも、心は常に広くありたいものだ。
自分の焦点距離を知る
自分が撮影時にどのあたりの焦点距離を好むのかを知るのに、簡単な方法がひとつある。
それは一度ズームレンズを使ってみることだ。
写真を仕事にしている人は、なかなか難しいかもしれないが、3か月でも半年でも、そのズームレンズ一本で写真を撮ってみる。
次に、撮りためた写真をビューアソフト(この場合アドビブリッジが良い)を使って一覧表示し、焦点距離の項目を見れば、どのあたりの焦点距離を使っているのかが、一目瞭然となる。

僕の2011年頃の写真。50ミリと24−105というキャノンのズームレンズを使用している。
50ミリが多いのは単焦点も含まれているから、必然的である。
注目するところはその他の焦点距離。28、32、35、40、45ミリあたりが多く使用しているポイントとなっているのが分かる。数こそ少ないが、実は40や45ミリといった曖昧な焦点距離のレンズも存在する。
その後、最も撮影域の多い焦点距離に近い「単焦点レンズ」を購入すれば、画質・フットワークの面で有利になり、写真がすぐに上達するだろう。(いくつもいろんなレンズを買って試さなくても良いので、コストの面でも有利になる)
あるいは、アヴァンギャルドに行きたい人は、あえてズームレンズで一切使っていない焦点距離付近の単焦点を買ってみるというのもありだろう。
最初は限りなく撮りづらく感じると思うが、それが功を奏して新たな写真スタイルを獲得するということもあるかもしれない。
この実験にも使用できるズームレンズと単焦点レンズを幾つか紹介しておくので、参考にしてほしい。
ズームレンズ
数年ぶりにリニューアルされたキャノン24-105の二型。
様々なズームレンズがあるが、標準ズームとされる24-105mmあたりはとても使いやすい。
Lレンズなので、画質、耐久性共にプロの撮影に耐える仕様となっている。
上記のキャノンに対応するのが、ニコンであればこの24-120。
画質・耐久性もよい。
単焦点レンズ
発売されて年数は経つが、50mmの定番Lレンズ。
最近リニューアルされた35mm Lレンズの二型。画質、耐久性ともに最高級。
ユルゲン・テラーも愛用の一本。
ストリートでのファッションスナップの人達に愛用されている85mm。とにかく重く大きく扱いが難しいが、ファッションに適した距離感と圧縮感が得られる。近々リニューアルされるという噂も。
最近は純正以外のサードパーティも勢いがある。シグマは本来レンズメーカーであり、徹底的に国内生産にこだわり、高画質・高品質を貫いている。
その35ミリは本家にも引けをとらないが、価格はリーズナブル。試す価値は十分にある。
実は一番世界で売れていると名高いキャノンの50ミリ。
Lレンズに比べ、シャカシャカな質感は否めないが、その軽量で取り回しのしやすさは他に類を見ない。
”単焦点”の醍醐味を知るにはもってこいだろう。
なんだか、カメラ雑誌の言い回し風になってしまいました。
是非試してみてください。
良い写真ライフを。