こんにちは、常丸です。
現在Londonの Alison Jacques Galleryにて、Juergen Tellerの写真展「Go-Sees, Bubenreuth Kids and a Fairytale About a King」が開催されているようです。
When Juergen Teller Photographed 1990s Go-Sees https://t.co/hWN9LLah77 via @AnOtherMagazine
— 田中 常丸 (@tokimarutanaka) January 3, 2018
ヨーガンテラーによる名作「GO-SEES」をリプリントしたものと、その他の作品で構成されています。
今は手元に無いですが、僕も持っていました。
これは僕ら世代のポートレート・ファッション写真家たちのバイブルです。
内容はもちろん、装丁も良くて写真集ファンたちの間でも人気で、最近は価格が高騰しています。
僕が5年程前に購入したときは、状態が悪くてそれでも20000円程しました。吉祥寺の百年で買った記憶があります。
現在は35000~75000円!
何故かこのアマゾンの日本人たちのレビューが間違いだらけなので、ここでは正しい情報を記します。
80年代の終わりから90年代にかけて、当時ヨーガンのウェストロンドンにあるスタジオを訪れたモデルたちをスナップしたものです。
1年間に渡るプロジェクトで、462枚(人)のモデルが収められています。(一年は365日なので、どれだけ多くのモデルがひっきりなしにヨーガンのスタジオを訪れたかがその数字だけで解る)
スーパーモデルブームの真っ最中で、若いモデル達はエスタブリッシュされたフォトグラファーに、自分のコンポジット(ブックの作品)を持って営業に回っていました。(この本では現在も活躍している著名モデルの若かりし頃が見れる)
フォトグラファーがキャスティングのイニシアチブを持っていたので、写真家に気に入られれば、大きな広告や雑誌の仕事を得ることができたからです。
ヨーガンは、次から次へとスタジオに訪れるモデルたちを、機械的に撮影しましたが、同時にファッション業界への疑問も抱いていました。売れては消えて、使い捨てのように扱われるモデル達の実態はどういうことなのかと。
機械的と書きましたが、実際機械的に撮影したわけではなく、まずスタジオの中でブックを見て、コーヒーや紅茶を飲みながら10分か15分ほど色々な話をして、それから帰り際に玄関か玄関の外で、35mmレンズを付けたコンタックスG2にフラッシュライトを付けて、時にT2で数枚撮影したそうです。(フィルムはコダック)
これはヨーガンがインタビュー映像の中で語っていたことです。
当時このプロジェクトは大きな反響を呼び、良くも悪くもヨーガンを更にファッション写真界のスターダムへと押し上げる結果となりました。
昨年2017年は、ファッション業界でのモデル達の労働環境に光が当たった年でした。
フォトショップ加工したモデルの写真には、広告でも表記が義務付けられたり。痩せ過ぎているモデルを起用しない、18歳以下のモデルは起用してはいけないという決まりもできたり。
とあるキャスティングディレクターが、オーディション際、何時間もの間、多数のモデルを暗い階段に待たせたまま、自分はランチに出ていたこともあったり。
そしてファッション写真家テリー・リチャードソンのセクハラ問題、コンデナスト系追放も記憶に新しい。
そのような状況の中、今またここにきて「GO-SEES」プロジェクトを展示するというのは、やはりヨーガンからファッション業界に対する問題提起のひとつなのかもしれません。
職業寿命が短い、モデルという職業に携わる女子たちの、儚く美しいポートレート。
この写真集は、ポートレートであり、ファッション写真であり、ドキュメンタリーでもある。
それ故、長く読まれていて、現在も多くのフォロワーやフォトグラファーたちから愛される名作となっている。
そこに隠されたメッセージを、ファッションに携わる私達はいつも心に留めておかなければならない。
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