少々大げさなタイトルですが、カメラマンになる方法を事例を交えて書いてみます。
「写真活動のあり方は好きにすれば良い」よくわかる気がする。フォロワーの多さでフォトグラファーを選ぶクライアントも確かに増えてるけど、そうでないクライアントだって同じくらいいる。姿勢、向き合い方の問題。 https://t.co/7pu6klvFzA
— 田中 常丸 (@tokimarutanaka) January 28, 2018
shINCに掲載されていた記事です。
https://xico.media/media/columns/photograph-stick-to-his-guns/
shINCを運営しているのは僕が一時期指導していただいていた五味彬さんです。
いわば僕の写真の師匠です。五味さんは現在日本で活躍する写真家を多く弟子に持つ、ファッション写真界の先生のような方です。
「人気を得る為に自分の写真をまげる必要はない」
心強いタイトルの記事ですね。
さらに、WEBの写真時代を生きるにあたって
・どういうスタンスで写真と向き合うかが大事
・広報宣伝は必須
・受け入れられる発表場所が必ずある
などということが書かれています。
僕も以前、ウェブ時代のカメラマンの生き方について、書きました。
参照記事:→9年目で実感した、カメラマンの営業方法
これは上でいう「広報宣伝」部分に当たります。
今〜5年くらいは確かに通用する方法です。今後はさらに違うかたちが求められると考えています。
日々のテクノロジーの進化のスピードは早いので。
20世紀的カメラマンモデル
僕は86年生まれですが、90年代の日本の写真業界の話をよく先輩方に聞かされて育ってきました。
また、2009年より、独学で写真の道に入ったので、いろんな著名なフォトグラファーに会いに行って話をすることで、フォトグラファーというものがどういうものかというのを探ってきました。
旧時代的カメラマンモデルとは、
<修行時代>
写真学科・専門学校を卒業→スタジオに入って3年修行→著名なカメラマンのアシスタントを3年務める→フリーランスとして独立
<独立後>
雑誌等のインタビュー仕事→ノンクレジットのページの仕事→オンクレジット(ファッション写真)で名前を売る→雑誌の表紙撮影をもらえるようになる→広告写真の仕事
という流れでした。
写真で食えるように成るまでに、10年くらいは普通にかかる。今10年も待っていたら、テクノロジーのスピードに置いてけぼりにされてしまいます。
そして実際にこのようなピラミッド構造になっていて、広告・テレビ・芸能をトップとした日本の経済システムが、そのまま写真業界のヒエラルキーに呼応していました。
つまり、広告写真が長い間写真業界の花形だったわけです。
これは日本にファッション写真家がいないことにも関係していて、ファッションを撮っていても、広告写真がトップで報酬も良いので、結局歳をとればとるほどに、広告の仕事しかしないようになるのです。
実際僕が2000年代に好きだったいわゆるファッション写真家も、今は全くファッションを撮らずに、広告・映像・映画のディレクションをしています。
海外ロンドン/パリ/NYは、ピラミッド型構造ではなく、点在モデルなので、また状況が違うのです。だからファッション写真家がファッション写真家として、広告写真家が広告写真家として生きれる土壌があります。
21世紀版のカメラマン
20世紀のモデルが今通用しないことがわかると思います。
写真学科・専門学校→ ユーチューブとネットで学べる
スタジオ→ シェアエコノミーの台頭で、経営難。名門スタジオもどんどん潰れている
雑誌→ 廃刊・経営難。(カメラマンに支払える報酬はない)
つまり、インタビュー仕事から成り上がって有名になっていくというカメラマンモデルは、雑誌が厳しい時点で、成功率はかなり低いものとなります。
ウェブメディア等もありますが、編集者の方が若い可能性は十分にあるので、どちらかが引っ張っていける力が必要です。
写真が良いことは前提ですが、その前後のプロダクションに理解があり、尚且つ提案力を持って仕事を進めることができるカメラマンが有利です。
最初の記事にあった様に、フォロワーの数でカメラマンを決める編集も沢山います。
しかし同時に、フォロワーの数を気にせずに、独自の視点を持ちキャスティングを行うクライアントチームだって沢山存在するのです。
特に面白いものを作ろうとしている人達は、そのような傾向が強いと感じます。
フォロワーの多いカメラマンに手伝ってもらおうというのは、マーケティングは建前で、自分たちの作るものへの自信のなさの現れです。
フォロワーを増やすために、無理に自分の仕事・写真をまげる必要はないというのは、写真以上に”生き方”を考える上で大切なことのかもしれません。
もがきながら、自分なりの表現方法を探っていくこと。
それが「どういうスタンスで写真と向き合うかが大事」の部分に相当します。
写真の発表場所
さて、最初の記事のポイントにもう一度戻ってみます。
残すは「受け入れられる発表場所が必ずある」
これはどういうことでしょうか。
簡潔に、ウェブのおかげで発表場所が広がった、と言い換えることができます。
以前は写真を発表する場所といえば、雑誌・広告・ギャラリー(展示)くらいのものでした。
それが今ではウェブやSNSのおかげで誰でもいつでも発表することができます。
ウェブから写真家になった事例はこちらで書いています。
参照記事:もしもカルティエ・ブレッソンがブロガーだったなら
個人のアカウントを利用した一次的な発表から、そこから雑誌・広告に派生する二次的な発表も生まれます。
もちろん、従来メディア(雑誌編集部)や、アートディレクター、デザイナーなどへのリサーチ・コンタクトのしやすさも格段に良くなっています。(90年代は師匠から卒業する時に、クライアントの電話番号リストをもらっていたという話も)
それらもウェブにより変わったことのひとつでしょう。
あとは、ストックフォトや、コントリビュート形式のウェブマガジン、雑誌等でも発表し、報酬を得ることが可能となりました。
ストックフォト
大手Shutterstock。
旅好きや、ブツの作品撮りを行っている方には特に良いかもしれません。
審査により登録した写真がダウンロードされるたびに、1、2ドル入って来ます。
僕もこちらに登録しており、過去に掲載した写真が資産となり、そんなに多くはないにせよ毎月自動的に稼いでくれています。一時休止していましたが、結構月々のアクセスが伸びているので、今年はまた力を入れてみようかなと思っています。
他にはゲッティイメージズにより運営されている
[iStock]
アドビの
[fotolia]
等があり、ストックだけで不労所得並の収入を得るにはかなりの労力と時間が必要とされますが、そのようなストックフォトグラファーは上記したようなサイトを複合的に利用し、利益を得ています。特化して自分の写真を追い込めば、難しくはないかもしれません。
しかし現在のところ最も利率が良くて使いやすいのは[Shutterstock]ですね。
クライアントにも出せないし、発表もできない。そんな写真を眠らせている方は、ストックしてみてはいかがでしょうか。世界の何処かに、あなたの写真を必要とする人がいるのです。
コントリビュート形式マガジン
現在コントリビュートブームということもあって、寄稿形式のマガジンはたくさんあります。
というより、寄稿でなければ雑誌が作れない状況だからです。
今流行ってはいるけれど、それは雑誌本来の姿でもあります。
広告に頼らずに、それぞれのクリエイターたちが表現したいものを作る。
僕も流行り始めた2011年くらいから、幾つかの雑誌に寄稿してきました。
[Contributer Magazine]

http://contributormagazine.com
[DEW Magazine]

[Schon Magazine]

http://schonmagazine.com/category/fashion/
寄稿系雑誌はファッションが圧倒的に多い。
コントリビュートは基本的に報酬は支払われません。
しかし確かなクオリティとアイデアを持って撮っていれば採用される可能性は高いので、挑戦してみてはいかがでしょうか。
自分の力試しにもなりますし、認知度も多少上がると思います。
まとめ
誰もがマリオ・ソレンティのような写真一家に生まれ育ったわけでもなければ、荒木経惟のように天才でもありません。
しかし全く悲観的になることはなく、情報を得ながら技術とセルフマーケティングをブラッシュアップさせていけば「自分の写真をまげずして、フォトグラファー(カメラマン)として生計を立てやすい時代」になることは間違いありません。
これからカメラマンという職種は、個人の数だけスタイルがあるような超細分化されたものになるでしょう。
実際僕の友人には、写真関係の会社員(正社員)として会社に勤めながら、職業DJとして活動しつつ、カメラマンとして国内・外ファッションブランドのビジュアルを撮っている人もいます。
それって、結局、何?
という思いを抱くかもしれませんが、これが21世紀のカメラマン像なのだと思います。
職人気質で、修行をして、ニッチな写真だけを追求している。確かにこれもカメラマンですが、次の時代をつくるのは、今の10代、20代なのです。
テクノロジーのおかげで、新たな感覚と、時代状況が交錯しています。
自分自身にも言い聞かせる意味でも、楽しみながら前に進むしかないですね。
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