写真家の旅の機材の選び方、3つのポイント

 

写真と旅は切っても切り離せないものだ。

人々は昔から、写真を撮るために旅をしてきたし、旅をするために写真を撮ってきた。

露光時間が30秒程必要だった大判カメラの時代には、写真館でのスタジオ写真が栄えた。

裕福な人達はこぞってスタジオに集まり、真剣な顔で30秒間カメラに向き合った。そういう露光時間の理由もあって、1800年後期〜1900年初頭の写真は、誰も笑っていない。楽しく無いわけでなく、魂を抜かれる恐怖でもなく。単にブレる為、誰も笑えなかったのだ。

それから、写真は戦争にいち早く利用されるようになり、エルンスト・ライツが「ライカ」という小型カメラを生み出した。

どこへでも持ち運べる、ポータブルという点で、これまでのカメラとは全く違っていた。

戦争を報道する為に利用されたカメラは、大戦が落ち着くと共に、裕福な者の娯楽となった。

写真のゴッドファーザーであるカルティエ・ブレッソンと、ロバート・フランクが登場した。

同じライカというカメラを抱えた二人は、若干の時代と場所は違えど、35ミリカメラの魅力を最大限に世界に植え付けた。

今では写真学科でなくとも、メディアの文脈で世界中の学校の教科書に登場する。

そしてブレッソンの写真を学生時代に見た米国を代表する写真家のアニー・リーボヴィッツは、当時をこう振り返る。

「フランクやブレッソンの写真を見て、写真家は旅ができる職業だと気づいたの。なんてことの無い旅行でも、カメラがあればそれが旅をする理由になる。それでお金がもらえるのだとしたら、こんなに最高の職業は無いわ」

彼女はカリフォルニアで写真学校に通う間にこの事実に気づき、それ以後は旅するままに、ローリング・ストーンズのツアーに同行し、ビートルズに付いて行き、ジョンが射殺される前に写真を撮り、ロックの写真家だと思われながら、華やかなファッション誌やカルチャー誌を撮り、セレブを撮り、政界を撮り、気づけば、アメリカの全てを撮るまでになっていた。まるでリチャード・アヴェドンやアーヴィング・ペンの運命をなぞるように。

こんなレジェンドなアニーでも、写真を始める動機は、今でもその辺にごろごろしているような”ありふれた動機”だったことには、僕も随分勇気づけられた。

ここで、アニーの旅の写真機材を紹介するのも良いかもしれないが、今は数十人のスタッフとジェットで移動するアメリカンスタイルなので参考にならなそうだ。

でもローリング・ストーンズ時代はきっと、カメラ1、2台に、レンズ2本のミニマルなスタイルだったと想像する。

旅の機材は少なければ少ない程良い。行動することが中心にあって、写真はその過程でチャッと撮るくらいが良い。過程こそが旅の本質だと思う。

何より、動けないと写真は撮れないのだ。

旅を自分のスタイルにするよりは、自分を旅のスタイルに寄せた方が良い。それに最低限のリスク回避術を盛り込めば完成だ。

僕なりの3つのポイントを。

1、荷物は出来る限り少なく

macbookとハッセルとペリカンのケース
macbookとハッセルとペリカンのケース

↑師匠から借りていたペリカンのケースを持ち運んでいる時代もあった。

軍用の素材を使用し、確かに最強のケースなのだが、何より重いしカメラしか入らないので旅には不向きだ。

実に”アニー・リーボヴィッツ的”で、アメリカ的でもある。

フライトして旅先でファッションや広告のシューティングをするには良いのかもしれない。

何度も言うが”沢木耕太郎的な旅”には全くといって必要ない。

僕はカメラマンでもあるが、ミニマリストでもあり、この「荷物は出来る限り少なく」を極めた結果、カメラしか持たないという手法に行き着いた。

この間、香港に行ってきた例をこちらで詳しく書いているので参照して頂きたい。

→フォトグラファーの旅の持ち物 手ぶらで香港編

写真を撮る以上、最低限カメラは必要となるが、極端に言えばそれ以外のモノは必要無い。最悪、死なないように必要なものを持っていければ、あとはだいたい大丈夫だ。よほどの極地に行かない限り、人が生息している旅先では大体必要なものは揃う。

2、コンパクトのデジタルカメラを選択せよ

contaxg2
contaxg2

僕も昔はフィルムカメラで旅に出ていた。(↑はコンタックスG2という好きなカメラ)

しかし、2014年くらいから「旅の時はデジタル派」へ移行し、軽量化と、大量撮影化に成功した。

何よりフィルムは大きくかさばり、カメラやその他の荷物以上の重さになる。

ロバート・フランクがAMERICANSを撮影した時も150本程のフィルムを携行したようだ。それだけで数十キロの重さになる。きっと大変な移動だったに違いない。その中あれだけの名作が創れたのも凄いことだが。

さらに、フライトが伴うとX線を通す事による感光問題も出てくる。ハンドチェックや、x線用フィルムバッグを利用する手もあるが、移動速度も下がるし、何より面倒だ。

データの消え行くリスクはあるが、既にデジタルで制作している写真家なら、デジタルをお薦めする。

それも、レンズ交換式の一眼レフやミラーレスではなく、レンズ一体式のコンパクトデジタルカメラを。

アウトドアや旅先ではレンズ交換さえもリスクに成り得る。ゴミが入りカメラは痛むし、交換のスキを付いて盗人や敵が攻撃してくる可能性もある。(どんな旅先だよ)

レンズ一体式ならば、ひたすら同じ画角で、まるでメモを撮るように撮影出来るので旅写真とも相性が良い。

特にフランクやブレッソンの使用した50ミリ、エグルストンやスティーブン・ショアの使用した35ミリは古典的なロードトリップ写真画角だ。

旅にお薦めのコンパクトを3つ上げておく。

 

当ブログで何度も紹介しているx100f。
レンジファインダーで35mmレンズ、サイズ感、重さ、画質文句なし。見た目も旅カメラそのものだろう。
参照記事:フジx100fの使い方。11個の魅力まとめ。

 

ルミックスのLXシリーズ。フランスのファッション誌「パープル」のフォトグラファー達も実はルポで使用する隠れたコンパクト名機。パナソニックだが、ライカレンズはあなどれない。画質とコンパクトさの美しい両立。

 

最近フォトグラファーまわりで評価が高いソニーのRX-1。 このコンパクトさでフルサイズのセンサー、35mm F2のゾナーレンズ搭載。下手したらライカのデジタルよりも「写る」と言われる。一眼レフの性能を超えてくる描写で、コンパクトとなれば、旅以外の日常使いでも十分活躍するだろう。

 

旅先にラップトップを持っていくか、というのはいつも悩ましい問題だが、現地で現像作業はしないと決めて持たないのも潔い。3、4日の旅なら、思い切って持たない方が、一気に軽量化できて良い場合も。

バックアップは最低とっておきたい時には、ポータブルストレージが役に立つ。

PCを持っていくパターンの僕の荷物はこんな感じ
ミニマルなフォトグラファーのバックパックの中身

 

3、予備機材ルールを徹底せよ

rimowa
rimowa

仕事の場合や、絶対にミス出来ない旅撮影の場合は、↑のリモワと、カメラバッグのコンビで出かける。

予備機材ルールというのは、一台が故障した時の為に、必ず二つ以上の予備機を携行すること。

まあこれはプロのフォトグラファーなら誰でもやっている基本中の基本だ。(いつも荷物多いねーという印象を受けるのは、この予備機材があるから)

具体的には、ボディ2台なら、レンズも同じもの2台、ストロボも2台、バッテリー・メモリも2つというという感じ。

それらをそのまま旅に適応するとなると迷うところ。

なので僕の旅の場合は変化球で「ボディ1台と、予備はレンズ一体型コンパクトカメラ1台」や「大きなクリップオンストロボと、小さなクリップオンストロボ」と、大小のコンビ技をよく使う。

同じサイズを持つよりも、荷物の量を減らせて、かつ、機材が壊れた時でも「最悪写真は撮れる」という状況を作り出すわけだ。

iPhoneの能力が上がっているから「最悪写真は撮れる」の予備機をiPhoneにすれば、さらに軽量化は進む。そこまで割り切れるかは写真家としての態度が別れるところだ。

ここでも、2で上げた「レンズ一体型コンパクトカメラ」が大活躍する。

だから、写真を仕事としているプロは、上記したような「サブにも成り得る、高画質なコンパクト」を揃えておいた方が、コスパ的にも写真的にも良い、ということになる。幸い最近はコンパクトブームもあって、どんどん程度の良いコンパクトデジタルが出ている。

旅の機材の詳細はこんな感じです。
旅の撮影機材 仕事編

 

最後に、インドネシアの旅写真を掲載して終わりにします。

Bali 2013 ©tokimarutanaka
Bali 2013 ©tokimarutanaka
Bali 2013 ©tokimarutanaka
Bali 2013 ©tokimarutanaka
Nyoman 2013 ©tokimarutanaka
Nyoman 2013 ©tokimarutanaka
Bali 2013 ©tokimarutanaka
Bali 2013 ©tokimarutanaka
Pepper 2013 ©tokimarutanaka
Pepper 2013 ©tokimarutanaka

 

Bali 2013 ©tokimarutanaka
Bali 2013 ©tokimarutanaka

 

さあ次の目的地に移動しよう。

 



人気記事ランキング

1、フジx100fの使い方。11個の魅力まとめ [保存版]

2、ビットコインの買い方

3、フォトグラファーが選ぶ、粋なコンパクトカメラ5選

4、物を持たずにシンプルに暮らす

ご案内

トキマルとは?

ポートレート撮影します

インスタ写真販売しています

最近のつぶやき

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です