電話嫌いの電話の楽しみ方

電話は嫌いだけど電話の良さというのはその拘束性にあるのではないかと思った。昔の下宿場に固定電話が一つだけあって恋人でも友人でもとにかく誰かと話す時は電話の前まで行って受話器を耳に当てなければならないその拘束性。拘束性が親密さを錯覚させるのではないか。

出る時間も余裕もないので普段は電話にほとんど出ない、というより常に何かしているので出れないのだが、どうしても出なければならない時は絶対にスピーカーかイアホンにしてスマホを耳に当てないようにしている。その拘束性から少しでも逃れようとするように。電話から離れると言葉をテキストのように少し冷静な情報として捉えられる気がする。ハンズフリーだと話の内容をpcに両手で書き留めて、次の行動をすぐに起こすこともできる。

pcに書き留めて文字にしていることを思えば、やはり最初から要件はテキストで来るほうが早いしありがたい。そして非同期という良さ。ハードボイルドなパラレルワールドを生きる僕たちには、電話はあまりに繋がりすぎる。映画マトリックスで電話が時空移動の手段となっているように、それは思っているよりも危険なものなのかもしれない。

拘束性からくる親密さ、つまり電話の醍醐味を最大限に享受したいなら- 例えば好きな人と話す時など- 電話は片方の手でしっかり持って、片方の耳にきちんと当てて、正面の風景や右斜め上をうわの空で眺めつつ遠くの相手を思いながら話すのがいいのかもしれない。違う世界に転送されてしまわないようにだけ、気をつけよう。

twitter : @tokimarutanaka
instagram : @tokimarutanaka
note : Tokimaru
store : TOKIMARU ONLINE
YouTube : Tokimaru Tanaka