十二日ぶりに渋谷の部屋で

泊まったホテルには大浴場が無かった。グーグルのレビューに掲載されていた大浴場の写真を見てこのホテルに決めたはずなのに、予約して実際チェックインしてみると大浴場は無く、あれは別店舗の写真ですとスタッフが言った。グーグルを過信してはいけないと思った。オフィシャルサイトを検索する一手間を惜しんではいけない。それでもWi-Fiは十分に高速で、チェックアウトまでにいくつか重要な仕事をこなした。レイトチェックアウト標準と、高速Wi-Fiと、広いデスクスペース。土地柄かリモートワークに最適化されていて、大浴場が無いこと以外はとても快適だった。昼前にチェックアウトしてQと信濃路で昼食をとった。ある小説家が通った鶯谷ではない方の信濃路。アジフライ、ウインナー炒め、肉野菜炒め、どて煮、串カツ。本家と同じあのウインナーが出てきて思わず微笑んだ。二人やりきった雰囲気で惜しむように蒲田を後にして渋谷へ向かった。渋谷の狭い部屋に戻ると身体のサイズが合っていないような気がした。身体のサイズが部屋に合っていないのか、それとも部屋のサイズが身体に合っていないのかわからない。このバッグ一つに人生で必要なものが全てあると思うと、もうこの事務所も部屋も要らないのではないかと思えてくる。バッグの荷物だけで2週間近くを生きてきたのだからこの先も生きられるだろう。戻ったばかりなのにもう次はどこに行こうか考えている。バッグに入れなかった今部屋にあるモノたちは、おそらくもう僕には必要ない。どこが本拠地かを完全に見失ってしまった。