入力機器とアンサーソング

はい、今緊急で動画回してるんですけども。と言えることに映像の直進性がある。写真や文章では、緊急で撮っているとか書いているなどとは表現しにくい。緊急で写真を撮ってもただの焦っている人であり、その緊急性が写真に現れるわけではない。写真や文章の時間は常に静止している。静止していることに写真の価値はある。逆に言えば、写真や文章にも直進性、つまり何かの緊急さに駆られて今まさにこの写真を撮っているんだという現在進行形を付与できれば、動画のような強度が出るのかもしれない。

ある映像研究者が映像の直進性について入力機器で説明していた。動画はビデオカメラで撮影される。ここではフィルムのロールが前後に二つ付いていて、突き出たレンズを含めると銃のような細長い形状をしているような昔のビデオカメラを想像しなければならない。形状が前に進むようなものになっていて、クルクル回るフィルムロールはさらに直進性を強調する。対してカメラはレンズのついた箱の中に面状のフィルムがある。カメラオブスクラを想像すればわかるように、元々はフィルムもレンズも無くただの箱に穴を開けたものだった。そのような機構的理由から動画は能動的であり、写真は受動的である。だが現在はミラーレスカメラで動画を撮影できるようになり、入力機器の形状からもたらされる映像の能動性は失われたように思う。

日記を書いて、Soushi Sakiyamaの新譜を聴きながら5キロを走った。曇り空でどんよりした日曜日だった。仕事に手をつけようとしたけど、寒くて太陽も無いのでやる気が全く出なかった。あらゆることを選択できるのに、なぜこんな寒い国に住んでいるのだろうと思った。こういう日もあると仕切り直して、本を読んだり音楽を聞いたりした。スウェーデンのギタリストであるイングウェイマルムスティーンのことがふと気になり、昔の映像を漁った。2019年くらいのライブ映像が上がっていて、少し痩せてるように思えた。インギーは色んな迷言を残していて日本のハードロック界隈ではネタとして扱われることが多い。実際はものすごく才能があって、音楽シーンに衝撃と革命をもたらした人なのだけど。ライブ映像の流れから迷言集に当たって「俺はロックなんか聴かない。ロックに影響を受けた事など一度もない。バッハ、ベートーヴェン、チャイコフスキー、モーツァルト、ドヴォルザーク、パガニーニ、ヴィヴァルディとかが俺のルーツだ」という言葉を見つけた。もしかしてあいみょんは、イングウェイに対して「君はロックを聴かない」を作ったのかもしれないと思った。

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