masafumi sanai iga daisuke

佐内正史と伊賀大介、という銀河

 

常丸です。

昨夜は佐内正史さんと伊賀大介さんの話しを聞きに、青山ブックセンターへ。

佐内さんの新作写真集「銀河」の見こなしについて。

見こなし=読解なのだが、昨夜会場にいた方はそれがイコールで結べない程別次元の意味を含むことを体感したと思う。

二人が写真を”見こなす”。もう、他の銀河につれて行かれたように終始可笑しくて最高でした。

佐内正史

ご存じない方の為に前情報記しておくと、佐内正史さんは1968年、静岡生まれの写真家。95年に写真新世紀を受賞し、97年に「生きている」という写真集でデビュー。それから2002年に「MAP」で木村伊兵衛受賞。現在まで、音楽や芸能そしてファッション等、活動の場を選ばずに”自らの作風”で仕事をしている。言わば作家性を軸に写真をビジネスできる国内では超稀有な存在。僕らの世代のヒーロー的写真家でもあり、80年代生まれの多くの写真家が間違いなくその影響下にいる。

伊賀大介

伊賀大介さんは、1977年、東京西新宿出身のスタイリスト。1996年に熊谷隆志さんのアシスタントを務め、1999年、22歳で独立。その後、雑誌、映画、広告等で活躍している。「あーこんな人いる」と思えるスタイリングが得意で、普遍的ながらもサブカルや古典からのマニアックな引用を加えて、あーこんな人いる、、けれど少し違和感あるぞ、とう人物を作り上げる。日本映画界では既に「伊賀にまかせておけば大丈夫」の風潮があり、これスタイリング誰だろうと思って調べると、大体というかほとんど伊賀さんが手がけている。2003年の映画「ジョゼと虎と魚たち」のスタイリングを手がけ、この映画のスチルを担当したのが佐内正史さん。おそらく二人の友人関係はこの頃から始まったようだ。

と前置きでした。

僕はこれまで様々な写真家に会って実際に話しを聞いてきたけれど、メディアに表出している写真と、写真家本人の”ズレ”がここまでない人は始めてだという気がしました。生み出している写真と、写真家像みたいなものがピタッと一致する感覚。

戦略的にやっている部分もあるのだろうけれど、写真家的に振る舞わないことが、その作家性を浮き彫りにするような、そんな雰囲気が佐内さんにはあるのです。

数々の雑誌のインタビューや、知人友人の話しで僕の中に作られていた佐内さんが、そこにそのままいました。

見こなしの他に、ウェブサイトを作ったのも最近、iPhone買ったのも最近、インスタグラム始めたのもつい最近で、自撮りを始めてやってみて、もうやらなくて大丈夫という話し。銀河のはなし、写真時間とフレームのはなし、ドラクエの話し。

佐内さんは良くも悪くも90年代の人で、今の時代にはついていけてないという見方もあるにはあると思います。しかし今回考えたことは、これからの写真はまた90年代にならざるをえない状況にあるのではないかということ。90年代的とかいう表面的なビジュアルの話しではなくて、本質、中身が生である90年代感。つまりそれは佐内さんがデビュー時から持っているスタンスで、その付近でしか写真が写真として生きる道はないような気がしてきています。

インターネットが生み出したもののひとつは、ダイレクトなインタラクティブ性です。それは中間が消え、点と点が直接繋がるということ。ファッションや広告・アートという、中間ありきで存在していたものが、ビジネスの面でも消費の面でも、そしてクリエイティブの面でも大きく変容しつつあります。バブルを抜けて、震災があって、オウムがあった。そんなパラダイム変換期の90年代に生きたひとりの写真家のスタイル。偶然にも同時期にインターネットが生まれて、20年が経ち、成熟してまた再びパラダイム変換期の最中にいるような感覚の今。そこでもう一度効いてくる佐内さん。

中間によって”作られたもの”と、”リアル”の判別に敏感な今なのです。僕たちはどうしたって、日々多くのものにしらけている。

伊賀さんとのコンビネーションも相まって、期待以上のイベントでした。

 

しばらく他の銀河を彷徨いそうです。