SPEWという匿名的写真家集団

 

先日のCP+の写真集イベント「PhotobookJP」でSPEWの話を聞くことができた。

SPEWは国際的に活動し、海外でも評価の高い横田大輔、宇田川直寛、北川浩司という三人の写真家により構成される”匿名的写真家集団”だ。
行為としての写真を大事にし、不定期に発動されるプロジェクトの度に、写真集を制作し発表している。

今回はトークショーに横田さんと宇田川さんが顔を見せ、キュレーターの菅沼比呂志さんが聞き役に回っていた。

SPEWは仲が良い三人で構成されているわけではなく、自分たちの日頃の写真行為を否定して取り組む場所として存在するようだ。

写真の賞等を受賞し、マーケットに名が知られるようになると、その路線を外すことは出来ない。それはポップミュージックでデビューしたアイドルが、二枚目のCDで演歌を歌うことが出来ないのと同じことだ。

一冊目に制作されたのが「ラブホテル」という作品で、男三人がラブホテルに滞在し、その中で起きることを写真を使いドキュメントしたもの。特にハプニングは何も起こらない。しかし異なる視点を持つ三人が写真を撮れば、新しいものが生まれる。そこでは”何も起こらないこと”が起こっている。撮影に飽きて、途中楽器店に楽器を買いに行き、何も演奏出来ない3人が音楽を制作することになる。そこで生まれたノイズを、写真展の際に映像と絡ませることに成功した。写真と音が同じレベルに存在し、それは明らかにノイズだった。音楽においてノイズがある部分で重要であることを音楽家は知っている。写真においてもそのノイズに価値を持たせようとする姿勢がSPEWにはある。

この一回目(一冊目)のプロジェクトで手応えを得た三人は、その後自らの制作の間を縫うように、早いペースで写真集を制作していく。現在も進行中だ。

「共有もコンセプトも徹底的に回避する。チャーハンあるいはバクテリアみたいな感じ。リーダーがいない状態を保つため」と、横田は語る。

リーダーのいない分散的なグループというのは、いかにも今の時代的だと思った。

なぜ本(写真集)というかたちにこだわるのか。

「一回どこかへ行ったら一冊にまとめたい。そしてそのまま閉じたい」

「写真展は実験できない。モノに変える過程でパッケージング、アイデアを出すのが面白い。本から製作考えたり、色々飛躍できる」
と横田は言う。

それには宇田川も同意しているようで、「大事になってきたら、何か目指し始める。もっと中立で、どこにでもいける状態を保ちたい。成果物が面白いのか、行為が面白いのか。」

「AIにより理論的思考は不要になる。であれば、作家がやっても勝ち目が無いので、その価値基準やクオリティは足かせになっていく」

AI時代を見据えていることには、不思議と納得させられた。

行為としての写真は、僕達よりも上の世代の写真家達が既に実践してきた王道とも言える思想でありスタイルだ。しかし、明らかに中平・森山・荒木、そしてそのフォロワーである世代、そしてさらに一回り下に当たる僕らの世代においては、行為としての写真のリバイバルが起きている中で「分散」や「AI」というキーワードが新たに付与される。そういう意味では中平・森山・荒木時代とも、あるいはその第一次フォロワー世代とも異なる「行為としての写真」世代であると言えるだろう。

誰でも写真集が手軽に作られる世界に生きているからこそ、写真家が見るものが変わり、そして新たな表現が出て来る可能性を秘めている。

全て説明しきらない、SPEWの姿勢。

その”ノイズ”のようなものこそが、まさに次の写真時代の示唆ではないだろうか。



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