NFTをわかりやすく解説してみる

2021年の3月頃、Twitter創業者のジャック・ドーシーのツイートがNFT化されオークションにかけられ話題になった。氏の一番最初のツイートは291万ドル(約3億1千万)で落札されたのだ。

NFTとは

NFT(Non-Fungible Token)非代替性トークンは仮想通貨と同様にブロックチェーン上で発行され流通するデジタルデータである。一般的なデジタルデータはコピーが容易なのに対して、NFTはビットコインと同じように参加者間での相互検証という仕組みを持っているため、ひとつのデータに対して固有性を持たせることが特徴である。

もっと簡単に言うと、NFTは偽造不可能かつ鑑定書と証明書付きのデジタルデータと言える。

a16zのChris DixonがポッドキャストでNFTとはウェブページのようなものだと言っているのが、そのイメージをつかみやすいだろう。

私はNFTをウェブページと同じくらい一般的な概念だと考えています。ウェブページについて考えてみましょう。最初に登場したとき、人々は「ウェブサイトだ!」と思い、それをオフラインの世界にマッピングしようとしました。例えばパンフレットのような使い方です。しかしこの30年間に見てきたように、賢い人たちがやってきて、それを革新していきました。それはもうただウェブサイトではなく、ソーシャルネットワークになり、SAASツールになりました。NFTも同じように幅広いものになるでしょう。

– Chris Dixon

ウェブページはプログラム可能なので何でもできる。どんなコードでも実行できる。NFTもプログラム可能なオブジェクトが、とつぜん希少価値を持ち、所有でき、譲渡でき、現実世界とリンクでき、スマートコントラクトを通じてデジタル世界とリンクできる。ソーシャルコントラクトによって現実世界とリンクさせることもできるのだ。

NFTの3つの特徴

NFTには3つの特徴がある。

1,相互運用性
NFTはイーサリアムのブロックチェーンを基本規格とし、発行された時点から複数のマーケットやプラットフォーム上で確認したり利用したりできる。

例えばネットワークゲームでも同じ規格を採用することにより、異なるゲーム間でNFT化されたアイテムの使用が可能になったりする。

2,取引可能性
これまでのデジタルデータは、自分のPCや契約しているサーバー上にあることで所有しているとみなしていた。しかしNFTは仮想通貨同様のブロックチェーン上に所有記録が明記されるため、所有者はNFTを相手と自由に取引することが可能になる。

これにより、絵画や彫刻等の美術品と同様に、資産価値を有するものとしてマーケットを成形する。

3,プログラマビリティ
NFTは単にアート作品を固有なものにするだけではなく、それ自体にプログラムを組み込める。そしてそのプログラムはこれから開発されるものであるため、どのような可能性を秘めているかは未知数である。

例えば美術品を転売する際、作者であるアーティストに作品代金が入るのは通常最初の1回のみである。その後は転売者である別のオーナーやギャラリー、美術館等が次のオーナーに売り渡し利益を得ることになる。

しかしNFTであれば作品が売れる度に作者であるアーティストに売買代金の一部を付与するプログラムを実装できる。この仕組はこれまでのデジタルデータには無い画期的なものだ。

このような特徴を備えるのが容易という理由で、現在ほぼすべてのNFTはイーサリアムブロックチェーン上で発行されている。

今後NFTが期待される分野

NFTが優位になる分野は、ゲーム、コンテンツIP活用、資産証明の3つである。

ゲーム分野は先に述べた通りで、アイテムの共有性が高まる。これまではゲーム内課金でプラットフォーマーに支払われていた代金が直接ユーザー間でやりとり可能になる。

コンテンツIP活用は例えばデジタル写真集を数量限定で販売できるようになるなど。これは今でも似たような仕組みがあるが、NFTの場合は固有性とコピー不可等のセキュリティを高めた状態での運用が可能になる。またアイドル等のコレクターズアイテムを、流通のコストをかけることなく世界展開できたりする。

最後の資産証明は、証明書や鑑定書の電子化に似たようなものだ。アート作品だけでなく、ブランドや土地、楽曲や写真の所有権を有するNFTをデジタル上で発行することにより、資産の流動性や、流通の透明化が進む。

NFTの歴史

NFTは2017年にイーサリアムのブロックチェーン上で誕生。「CryptoKitties」というゲームが始まりだった。これは「猫」を模したNFTを収集・売買・配合などが可能なゲームで、当時の仮想通貨バブルの流れに乗りピーク時は1900万の価値をつけた。

CryptoKittiesの登場以降、同じ用な収集型のゲームが登場した。この時既にNFTがこれまでの仕組みと違っていたのは、ゲームのキャラを外に持ち出してトレーディングできる点にあった。今最もメジャーなNFTマーケットプレイスであるOpenSeaもこのタイミングに登場している。

最近はCAPCOMがストリートファイターのIPを活用したNFTアイテムを販売したり、集英社がワンピースのIPを利用したMANGA ART HERITAGEを立ち上げたりと、国内大手が参入し始めている。

NFTの注意点

コピー不可能とされているが、あくまで正式なオーナーシップを担保するものであり、スクリーンショットや録音がプロテクトされるわけではないという点は注意が必要である。利用価値ではなく収集価値を守るという側面が強い。

証明書だけが残っていてデータが使えなくなるということにも注意。例えばゲームのアイテムをNFTで取得しても、ブロックチェーン上に記録されるのはアイテムのアドレスやメタデータのみである。画像やそのアイテムを表す環境は、ゲーム会社のサーバー上にあるため、例えばそのゲーム会社が倒産したりサービスを終了したりすると、そのアイテムは再生不可能になる場合がある。

今はブームでどの分野でも一気に人気が高まっており、NFTアート作品の価格も高騰しているが、それらが収まった時もその作品の価値性を保てるかという点には、十分気をつける必要がありそうだ。法的なルールも追いついていないのが現状だ。

画期的であり、デジタルデータに手触りを付与する技術であるため今後の動向には期待が集まっている。一方誤解を生みやすい技術でもあるため、それにより価格の異常な高騰や、リテラシーの低い人に対する詐欺なども増えている。

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