カメラのデザインに沿って

羽田空港にいる。

博多のとんこつラーメンが食べたくなって、急遽go to travelすることにした。とは言ってもラーメンを食べることしか目的はなく、到着してラーメンを食べ、一泊して帰ってくる予定だ。

今回は珍しくカメラを持っていない。もちろん手ぶらなのでまるで渋谷まで散歩に出かけるような装いだ。圧倒的にモノを持たないショートトリップ。持ち物についてはまた別に記そうと思う。

カメラを持ってきてないので、この今文章を書いているiPhoneだけで写真を撮ることになる。いつもカメラを使っているから、iPhoneでどこまで撮れるのか試したいという気持ちだ。

iPhoneは縦に構えるようになっているので、そのまま撮ると自然と縦の写真ができる。普通のカメラでは正しく構えると、横位置の写真が出来上がるからその点で既にカメラとしての潜在的なポテンシャルが異なる。ビートルズとABBAくらい違う。

だからいつものように横位置に構えたくなるのだが、そこをグッと堪えてそのまま縦位置で撮ってみる。カメラのデザインに逆らわない。なんとなくこの週末は縦位置縛りでいってみよう、と決めてみた。

それにしても首からカメラをぶら下げていないと、体も心も軽い。

iPhoneひとつ。楽すぎていいなぁ。

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桜を撮る!4つのポイント

sakura-close-up

こんにちは、ときまるです。

本日、桜がもう開花したとのニュースが。

早いですね。

世界中で多くの混乱が起きていますが、季節は確実に変わりつつあるようです。

今日は桜の撮り方について書いてみます。

撮り方、なんてそんなたいそうなものでも無いのですが。

4つのパターンを覚えておけば、桜写真にバリエーションが出せますよ、というものです。

最後に被写体主義と既視感についてまとめます。なぜパターン化することで写真が上手く見えるのか。

それではさっそく行ってみましょう。

1、寄ってみる

定番ですね。寄ってみます。

背景にも桜をぼかして入れて、空の抜けも意識すると良いでしょう。

桜のピンクと空のブルーという組み合わせだけで、春を演出できます。

こちらはリコーのGRというカメラで撮影しています。

コンパクトなのにマクロモードがついているので、寄って撮れる最強のカメラです。画質も申し分なしです。

2、引いてみる

寄ってみたら、今度は引いてみましょう。

桜の木全体を写すのです。

画角は24~28mmくらいの広角がよいでしょう。

引き写真の時は、画面を占める被写体の割合を意識してください。

上記の写真は、桜8、芝1、空1くらいの割合になっていて、桜を中心とした構成になっています。

風が強い日に撮影すると、桜が宙に舞う絵を撮ることができます。三脚を使って瞬間を待ち望む系も良いです。

こちらの桜はニコンのD系で撮影しています。

趣味でも仕事でも使えるハイエンドなカメラで、桜を撮るにはなんの問題もありません。解像度が大きなモデルは本格的な風景写真を撮るのに適しています。

Nikon デジタル一眼レフカメラ D850 ブラック
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3、前ボケ

続いては、前ボケです。

桜の花弁を画面手前に置いて、ピンとは奥の木に合わせます。

こちらの作例はそんなに良い例ではありません。もっと手前をボカして、ファンタジーな表現が「前ボケ写真」となります。

個人的にはあまりに手前がボケすぎると、別に桜じゃ無くてもよくなってしまうので、ギリギリ桜ということがわかる程度のボケでも素敵かなと思います。

1と同じくリコーGRで撮影しています。

4、環境を取り入れる

最後は、環境を取り入れることです。

桜だけにフォーカスするのではなく、桜が存在する環境を取り入れた写真です。

スナップとしての桜とも言えるかもしれません。

「公園」や「桜の名所」みたいな桜はたしかに美しいです。しかし撮影者も多く、同じような絵になりがちです。どれもストックフォト的な写真になってしまいます。

そこでおすすめなのがこの4つめの方法。

「さあ桜撮りに行くぞ」みたいな気合の入った感じではなく、自分の生活の延長線上でただ出会い頭に撮ってみてください。

言うなら脱力系でしょうか。

時にこのような写真の方が、桜の存在感や美しさを表現できる場合があります。そして、桜の名所で誰もが撮影している写真とは違うものを見ることができます。

こちらはM型ライカで撮影しています。

生活や人生を撮るにはどこでも持ち運べることが条件。ライカはそのような写真に向いているカメラです。

被写体主義と既視感について

誰もが撮影する被写体なので、桜写真で突出したものを生み出すことは正直難しいと思います。

こんなツイートをしました。

いろんな桜の撮り方があるし、どう撮ってもよいのが桜だとも思う。それは富士を描いたり、写真にすることと同じように、桜が多くのメタファーを含んでいて、象徴的で、かつ見た目にも優しいからだ。今年はどんな桜と会えるだろう。

Tokimaru

「どう撮ってもよい」

4つのポイントを述べてきたところで、突然つき放すようで申し訳ないですが、僕の結論はこの通りです。

例えば、芸能人が写っている写真は「あ、誰々だ」という認識をまずしますよね。その後に、肌キレイだなとか、髪型かっこいいなとか、サングラスどこのブランドだろう。なんて情報が入ってきます。写真そのものは情報となり、絵そのものに価値はありません。誰が撮ったってトム・ハンクスはトム・ハンクスなのです。

そのような写真を被写体主義的写真と言ったりしますが、桜もその部類に入ることが多々あります。

見て撮って「桜だ、キレイだ」ただそれだけです。

ただそれだけなのですが、被写体主義的写真を、写真的に観るという意識が、撮り手にバリエーションを持たせます。

そしてどのような写真でも「定形」というものがある。それはフォーマットであり、お約束のようなものです。

その定形(フォーマット)をなぞる形で写真を撮ると、上手く見えるのです。

なぜでしょう。

それは人間のもつ既視感のせいです。

子供は生まれた頃から親の顔を見続けて成長します。親の顔をみると安心するのはそのためです。人に限らず、モノやスタイルでも同じようなことが言えます。繰り返し見ているうちに、無意識のうちに情報が刷り込まれ、定形が形づくられます。

一度定形となったものを見ると人は安心します。

逆に、定形から外れたものを見ると、不安な気分や、不快な気分、違和感などが生まれます。いつもと違うからです。

ポートレートやファッション写真や広告写真にお決まりの定形があるように、桜写真(花)にも定形があります。

定形をなぞると安定して見える=写真が上手に見える。

そのような解釈で、今回は桜写真の”おきまり”をいくつか上げてみました。

新たな桜写真を生み出すヒントとしては、これらのお決まりから外れてみることかもしれません。

他の人が撮る桜が今年も楽しみです。

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仕事に必要な最低限の撮影機材について

こんにちは、ときまるです。

今回は、フォトグラファーとして独立する際に、揃えておく必要がある機材について考えてみます。

フォトグラファーを目指している方や、アシスタントの方々と話している時にたまにこのような話が出てきます。

最初に言っておくと、撮影内容やスタイルは人それぞれですので「絶対これ!」というような万人に通用するものはありません。

しかし僕の経験から、何があれば困らないのか。何があれば仕事を受け、フォトグラファーとして活動を続けることができるのかを書いてみます。ひとつの参考にして頂ければ幸いです。

フォトグラファーとして独立する時

フォトグラファーとして独立するタイミングは人により様々です。

しかし何もないところから機材を揃えて突然、さあ独立しよう。という人は少ないと思います。

多くの人が、組織や師匠の元である程度経験を積んでから、然るべきタイミングをみて独立しています。そしてその期間にある程度の機材を揃えています。

僕の場合は5年ほど前に、所属していた写真事務所を辞めたタイミングで独立しました。独立と言っても最初から写真の仕事があるわけでもなく、バイトのようなことをしてしばらくは食いつないでいましたのでいわゆるただのフリーターです。その時持っていた機材はフルサイズの一眼レフ(キャノン5Dm2)とシグマの50mmレンズ一本だけでした。

その後少しずつ仕事ができるようになってから、徐々に必要な機材を買い足していきました。

ロールプレイングゲームで、少しずつレベルを上げて、良い装備を買うような。フォトグラファーという職業にはそんな感覚があります。僕たちは幼い頃、プレステの中でやっていたことを、大人になって人生というリアルゲームでただ繰り返しているだけなのかもしれません。おっと、話が逸れそうなので戻します。

ここで言えるのは、独立して最初から全てを持っておく必要は無いということです。

もちろん、最初からある程度の機材を揃えておくことは、仕事を進める上でとても有利になりますので、金銭的余裕がある人はどんどん買って持っておいて良いと思います。

スタンダードセットと、ミニマルセット

では実際にどのような機材を揃えておけば、仕事として写真が撮れるのでしょうか。

機材なんてどうでも良いという人がいますが、それはある意味では間違いではありません。例えば写真家の奥山由之さんは”写ルンです”で単価50~150万ほどの仕事を実際に行っています。(実際は写ルンです以外の機材ももちろん現場で使っているはずですが)

作家という軸で写真家のポジションを築ける人はそれでいいわけです。この場合クライアントは「写真家のスタイル」にお金を払っています。

ただそのような写真家は一握りです。2017年頃で、東京にはフリーランスのフォトグラファーが約2万人いるというデータがあります。2020の現在はそれより増えているか減っているかわかりませんが、とにかく東京だけで2万人カメラマンがいるのです笑

フォトグラファーは明らかにレッドオーシャン市場なので、スタイルにお金を払われる人よりも、確実に写真を撮ってくれる「信頼」にお金を払われる人の方が圧倒的に多いのです。

これは逆に言えば、特別なスタイルが無かったとしても、確かな技術と一定の品質が出せれば、フォトグラファーとして仕事ができるということなのです。

前置きが長くなりました。

今回は標準的な機材セットと、最小限スタイルの2通りを提案します。前者をスタンダードセット、後者をミニマルセットと便宜的に名付けます。

なぜこの2通りなのかと言いますと、僕自身が実際に、スタンダードセット→ミニマルセットの経緯で仕事をしてきたからです。

[スタンダードセットの内容]

  • 35mmフルサイズボディ2台
  • 35mmレンズ
  • 50mmレンズ
  • 85mmレンズ
  • 24-70mmズームレンズ
  • 70-200mmズームレンズ
  • クリップオンストロボ
  • Macbookと外付けHDD

[ミニマルセットの内容]

  • 35mmフルサイズボディ
  • 50mmレンズ
  • 24-105mmレンズ
  • Macbookと外付けHDD

機材内容はこのようになります。

まず、スタンダードセットはこれさえあればほとんどの仕事をこなせるという内容です。実際に活躍しているフォトグラファーもこちらのライナップを中心にそろえている方が多い印象です。

フルサイズボディに、ほぼ全ての焦点距離に対応できるレンズ群。基本を単焦点レンズとしているのは、コンパクトでとりまわしがしやすいということと、圧倒的に描写性能が良いという理由です。解像度や歪曲収差などがズームよりも良く、コスパも良いです。

良いレンズ(単焦点)で撮ることは、後処理の時間短縮にも繋がります。

撮影はバックアップ(予備機材)が最も重要です。トラブルが起きて撮影が出来ないとなると、一回で信頼を失い仕事は二度ときません。それくらい厳しい世界です。ここでは独立したてを仮定していますが、本来は「MacやHDDなども全て2台以上現場に携行することが基本」ということを覚えておいてください。

ミニマルセットは、初期投資を抑え、あらゆる不便を被ることを受け入れたうえでの選択です。しかし、後述しますが、ある程度仕事ができる(複数のクライアント)ようになると、とても威力を発揮してきます。

償却期間と外注費を考慮する

撮影内容によってはミニマルセットのみで完結できる仕事は実際多いです。ミニマルセットで撮影出来ない案件の場合は、外部レンタルやサブスクリプションサービスを利用することでクリアできます。

ミニマルセットで撮影単価の低い仕事を行う場合、外注費が発生するために、純利益が少なくなります。時によってはマイナスになります。

スタンダードから→ミニマルの流れになるのはこのためです。

独立したての頃は、高単価の仕事を受けるのは難しいでしょう。(署名な写真家についていたとか、名門スタジオを卒業して優秀とか、作家性が高いという条件がない限り)

なので単価の低い仕事をすることになります。そうなると、機材は自前で持っていた方が、外注費がかからないため有利なわけです。

撮影単価の低い=2~5万の仕事と考えてください。機材をレンタルするとボディ15000円、レンズ10000円で、25000円です。撮影料としての収入はほぼ無くなります。(場合によってはマイナスになります)

撮影単価が上がる=20万~100万になれば、その案件において多少の外注費がかかっても余裕でペイできます。しかもレンタル会社のメンテナンスがされている、最新機材を使うことができるので、実はレンタルした方が安全面、クオリティの面でパフォーマンスはあがるのです。

僕も当初は、少ない機材から→多くの機材を揃えていくことになるのだろうとなと思っていました。どんどん機材が増えて、強くなっていくイメージです。

しかし最近は、多くの機材から→少ない機材という流れで、所有する機材をどんどん減らしていく傾向になっています。

それは僕がモノを持たないことを好む為はなく、仕事内容や、案件規模や、利益率や、現場でのリスクを考えた上での判断です。

また、カメラ自体のアップデート周期が早すぎるということも関係しています。昔は一台ボディを買えばそれで、5年、10年と仕事ができたかもしれませんが、今は1年おきにアップデートされた最新機種が発売されます。

毎回新品を買っているよりも、レンタルした方が圧倒的にコスパも撮影パフォーマンスも上がるような時代なのです。

使い慣れている自分の機材というのは確かに素晴らしいのですが、いつ壊れるかわからない古い機材で撮影することほど、恐ろしいことはありませんからね。

クライアントに対して良い写真を確実に撮り、素早く納品するためにもそのような仕事方法、撮影機材の選択方法が今は求められていると感じます。

今回は以上です。

最後に現行商品で、機材のリンクだけ貼っておきます。

焦点距離のラインナップさえあれば、メジャーメーカーなら、どこでも良いと思います。僕は仕事写真においてはキャノンを使うことが多いので、そちらを。

多くのメーカーからミラーレスも出ていますが、仕事は一眼レフ派です。撮ってると意識させる撮影においては、やはり取り回しのよいサイズ感と音の心地よさは一眼レフが勝ると思います。

フルサイズボディ

Canon デジタル一眼レフカメラ EOS 5D MarkIV ボディー EOS5DMK4
キヤノン (2016-09-08)
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35mmレンズ

Canon 単焦点レンズ EF35mm F1.4L II USM フルサイズ対応
キヤノン (2015-09-17)
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50mmレンズ

Canon 単焦点レンズ EF50mm F1.4 USM フルサイズ対応
キヤノン
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85mmレンズ

Canon 単焦点レンズ EF85mm F1.4L IS USM フルサイズ対応 EF8514LIS
キヤノン (2017-11-01)
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24-70mmズームレンズ

Canon 標準ズームレンズ EF24-70mm F2.8L II USM フルサイズ対応
キヤノン (2012-07-20)
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クリップオンストロボ

Canon スピードライト 600EX II-RT
キヤノン (2016-07-31)
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ラップトップとHDD

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縦位置でフレーミングすること、あるいはデジタルサイネージについて

object 2020 ©tokimaru

こんにちは、ときまるです。

縦位置で写真を撮ることは、案外難しい。なぜなら、カメラは横位置で撮るようにデザインされているから。

そんなツイートをしました。

ほとんどのカメラが、構えた時に、右側にシャッターボタンがあり、左手でボディとレンズを支える構造になっている。

左利き用のエレクトリックギターというものは、ジミヘンを筆頭にごく普遍的にこの世に存在するが、左利き用のカメラというものは存在しない。(特注生産で一部作られたりはしているのだろうけれど、僕はまだ見たことがない。)

縦位置にカメラを構えるということは、不自然さを享受するということであり、身体能力を使うことだ。

object-2020

「作品を撮るのは簡単だよ。全部縦でとればそれは作品だ」

とは誰の言葉だったか。

あながち間違いではないように思える。

人物を撮りたい人であれば、自然と縦位置のフレーミングを覚えるだろう。人は縦に長いから、あるとき縦で撮ったほうが収まりが良いことに気づく。

しかし風景しか撮らない人は、縦にする理由が何一つない。だから縦にカメラを構えるとなんとなく落ち着かないということが起こる。

作品の話に戻るけれど、縦位置はコンテンポラリーの作家に多用されているため、ただ縦にするだけで写真がコンポラ感を帯びてくる。縦にした瞬間に、作品化しようとする撮影者の意図が見えてしまう。作為的写真。

だけどそのような写真はコンポラ感を”帯びている”だけで、コンテンポラリーの領域に入れる写真は少ないように思う。僕はと言えば、ヴォルフガング・ティルマンスなんかが大好きで、彼の写真をみて育ってきたものだから、縦位置にするとなんとなくいつも彼のイメージが脳裏をかすめたりする。

あとは歴代のファッション写真。面白いことに、ファッション写真は本来たて位置で撮影されるべき体裁であるが故、それが横位置になると逆に凄みを増すということが起こる。スティーヴンメイゼル、ティム・ウォーカーにグレンルッチフォード、アニー・リーボヴィッツ。大人数で劇場型になるほど、画面構成上、横位置が求められる。

縦がコンポラとファッション写真だとすれば、横位置はドキュメンタリーだと思う。35mm判でのアラーキーや、ストリート系のゲイリーウィノグランドやジョエル・マイロウィッツは横位置が多い。ナン・ゴールディンやアントワンダガタも横の印象が強い。

ジャンルに限らず、縦のフレーミングが上手い人は、ただ上手い。きっと縦で撮らせても上手い人が、写真の上手い人なのだろう。

幸いなことに、iPhoneのおかげで私たちは縦位置でフレーミングする機会に恵まれている。カメラの機構により横位置を強いられるのと同じで、スマホのデザインにより私たちは縦位置写真を強いられてるのだ。デザインによるフレーミングの有限化。

今、街中のデジタルサイネージが随分増えてきた。

それらは多くが縦型なのだ。(駅の構内にある)

ムービーのキャメラマンは、縦位置のフレーミングが苦手だ。彼らは35判の2×3よりワイド、16:9(今では更に横長のフォーマットも)に慣れているためだ。写真は元々、映画用のフィルムの”余り”で撮られていた。

そういう意味では、あの街中でのサイネージ広告の仕事は、フォトグラファーあがりのビデオグラファーが担当した方が、場合により効果的なのかもしれない。フォトグラファーは縦位置も難なくフレーミングできるだろうから。商業写真家にとっては、ひとつの受注チャネルになり得る。

そのように考えると、映像は有限性のメディアだなと思う。禁欲のメディアと言ってもいい。

フィルムやセンサーに縛られて、カメラやレンズという機構に縛られる、プロダクション過程では暗室やソフトウェア、PCに制限され、そして最終のアウトプットの形態では、雑誌、紙、ビニール、鉄、プラ、液晶に、縛られているのだから。

ここまで縛られていて、時代により完パケ形態がありとあらゆるものに変化するのなら、逆説的にそれは自由のメディアなのかもしれない、とも思う。

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レンジファインダーカメラを最大限に楽しむ設定

Setting of Rangefinder Camera

今回はレンジファインダーを楽しむための設定について考えてみます。

レンジファインダーとは?

レンジファインダーカメラとは、光学視差式距離計が組み込まれており、距離測定に連動して撮影用レンズの焦点を合わせられるカメラのことである。レンズの繰り出し量などを測定することで合焦装置と光学距離計を連動させ、スプリットイメージや二重像の重ね合わせによりピント合わせを行う。

Wikipedia

レンジファインダーの利点

・一眼レフより断然コンパクト
・ミラーが無いので、ミラーショックが発生せず、低シャッター速度でもブレにくい
・シャッター音が小さい
・ファインダーが光学式であるため、被写体をそのまま見ることができる

などが上げられます。

レンジファインダーの欠点

・パララックスが発生する(ファインダーの像と出来上がる写真の構図に微妙なズレが生まれる)
・レンズキャップをしたままでもシャッターが切れる
・マクロ撮影が苦手(最短撮影距離が長くなる)

などが上げられます。

しかし、最近のデジタルなレンジファインダーであれば、パララックスの補正機能がついていたり、マクロモードがついていたりと、それらの弱点をほぼカバーできるような構造になっています。

Shibuya 2019 ©tokimaru / Leica M10-D, summicron50mm

カルティエブレッソンの設定で

20世紀を代表するフランスの写真家に、アンリ・カルティエ・ブレッソンという人がいます。

写真をしている人であればほぼ知っている写真家でしょう。

ストリートやドキュメンタリー写真を中心に活躍し、多くの名作を残しました。グローバルな写真家集団「マグナム・フォト」の設立者のひとりでもあります。

レンジファインダーを楽しむ最も簡単な方法は、ブレッソンのセッティングをそのまま真似ることです。

M型ライカに50mmレンズであればほぼ同じですが、他のカメラでも構いません。そして

シャッタースピードは1/125、絞りF8、iso100、距離5mに設定します

あとは好きな瞬間をフレーミングして、シャッターを押せば写真ができあがります。

ブレッソンはこの設定で固定し、人物の動きが最も美しい配置を構成する瞬間を狙ってシャッターを切っていました。

この設定で絞りを8まで絞ると、3m~12mくらいまでピントが合います。ほぼパンフォーカス的になるので、ピント合わせの必要がないということです。(感覚的に微調整はしますが)この手法をゾーンフォーカスシステムといい、多くのストリートフォトグラファーの間で使われています。

露出にシビアになりすぎないこと

レンジファインダーを楽しむコツは、露出にシビアになりすぎないことです。

ブレッソンの設定で撮ると、必ずしも適正露出で撮影できるとは限りません。

過去に、この記事で16ルールについて書きました
これ1つでOK、フィルム写真の露出の決め方

ブレッソン設定のポイントは、ネガフィルムの感覚でデジタルを使うというところにあります。

Roppongi, Tokyo 2018 ©tokimaru / Fujifilm x100f

写ルンですの気分で

ネガフィルムで設定不要のカメラと言えば、写ルンですがあります。

僕はライカをちょっと重い写ルンですと捉えています。(値段はさておき)

レンジファインダーは見えていることで速写が可能になるということは前にも書きました。

写ルンです同様に、カメラの設定は固定しておいて、撮る瞬間はただ押すだけです。

デジタルであればrawで撮影することにより、ある程度の露出差は後処理でカバーできます。これは写ルンですの適当なネガを、ラボの現像処理で適正まで持っていくやり方となんら変わりません。写ルンですをお店で現像すると、なんとなくちゃんと仕上がって来ますよね。あれは撮影時にきちんと撮れているわけではなく、バラバラな露出をラボの現像機で自動調整しているのです。

また、最近のデジタルカメラのレンジは広いので、ネガフィルムのラティテュードに匹敵するか、それを越える可変域があります。

個人的には、後処理さえしないという方法もおすすめです。後処理をしないということについてはこちらの記事で書いています。
現SNS時代に、あなたの写真を7倍良くする、たった1つの方法

好みのトーンのカメラをjpec撮って出しで使えば、状況によっては、現場の雰囲気がよりリアリティを持って立ち現れてくる場合があります。

そんな人の写真を見ると、グッと動かされる何かがあるのです。

ちなみに今回の設定は、晴天の日中・屋外、という条件でのみ使えます。

その他の条件でおすすめのセッティングはnoteで書いていますのでこちらもどうぞ。

Leica M10-D の速写性

Quickness of M10-D

ライカのファインダーを覗いた写真家の友人がこう言った。

「現実よりもクリアだ」

ファインダーこそレンジファインダーの命だと言える。レンジファインダーカメラの歴史を創ってきたオリジナルなメーカーにその妥協は一切ない。それはデジタルになっても変わらない。

レンズを通した、あるいは液晶を通した像で被写体を見ることと、明度の高いガラス越しに被写体を見ることは明らかに異なる。

今でこそ、被写体と液晶画面に写る像に遅延差は無くなったものの、体験そのものが根本的に異なるものだ。

M型の撮影スタイルの大きな特長として、撮像フレームの外側まで見えることにより、フレーム外から入ってくる被写体の動きを予測して撮影できる。これはレンジファインダーでなければできないことだ。

”見えている”ということは速写を可能にする。それがライカがストリートスナップやルポルタージュに多用される理由だ。

逆にビューファインダーのように正確なフレーミングは得意ではない。その分ノーファインダーや、純粋なドキュメントにおいては明らかな効力を発揮する。

最近は全てのカメラがデジタルで写りすぎるからこそ、フレーミングや構図にある種のゆるさを取り入れるのも良いのかもしれない。

そして静かなシャッター音と、良質なシャッターフィールがある。

音と、押した感触は、撮影をする上でとても重要な要素だ。被写体が人物であれば、両者の気分にも影響を及ぼす。M10-Dの音と感触は、それが考え抜かれた上でデザインされているのがわかる。

先日、Leica M4と比べたら、ストロークはM10-Dの方が若干深めだった。好みによるが、個人的には全く問題ない。

Leica M10-D のすべてにもどる

たったひとつのカメラ

Just one Leica

最近はライカ1台と50mmレンズ一本で、写真している。

これまで多くの機材やカメラを使ってきたけれど、保管庫もカメラバッグもすべて処分してしまった。残ったものは一台のライカだけで、それは常に作業デスクの上が定位置で、首からぶら下げたりして持ち歩いている。

依頼された仕事でも使えれば使い、日常の記録も、パーソナルなプロジェクトも全てこれ一台で行っている。

哲学者の千葉雅也さんが、有限化について述べている。

喫茶店にいくと、そこに永遠にいるわけにはいかない。いつかはお店を出なければならないという制限がかかる。その中で一定のタスクを仕上げなきゃいけないという暗黙の圧によって作業が進むんです。喫茶店に行くというだけで、すごく大きな意味でポモドーロテクニックが起動する。

千葉雅也 – 書くための名前のない技術

カフェで作業や物書きをすると、なぜか捗るという経験は、小説家でなくてもあるだろう。カフェに永遠にいることはできない。店はいつか閉まるし、座りすぎてお尻が痛くなることもあるし、お腹がすいてラーメンを食べたくなる時だってある。そのような制限が強制的に働くおかげで、作業に集中することができる。

カメラを一つしか所有しないことも有限化だ。

写真を始めたばかりの人が、多機能なカメラや、多くのレンズ(ズームレンズも)を最初から使うと、どれをどのように使えばよいのか、使い方に迷うことがある。使い方に迷っているうちに、撮りたい瞬間を逃したり、条件下で最適なパフォーマンスを発揮できなくなる。

ただ押すだけで良い”写ルンです”は有限化の極地だ。何も考えずただ押せば良いので、そのぶん瞬間や被写体に集中できる。

カメラとレンズが1つしかないと、様々な段階で迷いがなくなる。依頼された仕事もそれ一台でどのように取り組むべきかを考え、あとは光と環境と状況を読むことに集中できる。

写真は選択で成り立っている。被写体を選んで、カメラを選んで、レンズを選んで、焦点距離を選んで、絞りやシャッタースピードを選んで、ピント位置を選んで、構図を選んで、タイミングを選んで、一枚が撮影される。撮影された後の編集のプロセスも、無限の選択可能性に満ちている。(ソフトは、パラメータは、トリミングは…)最も重要なセレクトは、選択そのものだ。

一台のカメラを使うことは、それらの選択を含めて有限化することである。

ライカを選んだ理由はnoteに余地を残しておくとして、ここでは一つ、”小さいこと”を上げておこう。

一日は無数の瞬間で成り立っている。この瞬間のほとんどはすぐに忘れ去られるが、稀に永遠に記憶されるようなタイミングが訪れることがある。どの瞬間が残るのかは、後にならないとわからない。だから常にカメラを持ち歩く必要がある。

小さくてどこへでも持ち歩けると、まだ見知らぬ人や景色に出会う機会が多くなる。ただ人生を記録するだけでなく、カメラを介して人と出会うことで人生は豊かになる。

コンパクトで耐久性があり、よく写るカメラが一台あれば、他には何もいらない。

あとは「いつでもどこでも良い写真が撮れるはずだ」という気分と、ハンドクリームくらいあればいい。

400記事

400 articles

前回の記事で400本目となったようです。300本達成!のエントリーが2018年の6月12日でしたので、300から400への100本は結構時間がかかってしまいました。少しペースを落としながらも、しかしよくまあここまで駄文を量産できるものだなと自分でも感心しています。

ここまで来たら、とりあえず1000です。1000。目指したくなってきました。50になっても書いていたら面白いと思いませんか。「えっ、お前まだあのブログやってるの」と50歳の友人に言われるわけです。

大竹伸朗さんが好きで、既にそこにあるものという本は僕のマイベスト隙間本なのですが、これには大竹さんのデビュー前の若い頃の文章から、割と直近のものまでがごちゃごちゃっと入っていて、本人も「若い時のは恥ずかしい」なんて”あとがき”で述べています。

たったここ3、4年でも恥ずかしいと思うのですから、20年くらい後に今の文章を読み返すとどういう気持がするだろうと好奇心があります。でもそれは逆に意外と成長しているというか。文体やその時の気分もあるのかもしれないですが、過去の文章はとても稚拙に思えるわけです。とはいえ、今オトナで洒脱な文章が書けるようになったかと言えば全くそうではないのですが。

検索で偶然訪れてくれた方、そしていつも読んでくださってる方、ありがとうございます。

あれ、まだあいつ書いてるんだっけ、とまた忘れたころに覗いてもらえると嬉しいです。

最後に、備忘録としてアクセス数ランキング(年間)を載せておきます。自分でも知らなかった逆ランキングも笑

読まれた記事ベスト5

  1. フォトグラファーが選ぶ、粋なコンパクトカメラ5選
  2. どうしていまさら?キャノン EOS 6D レビュー
  3. LeicaQのトーン
  4. 結局どれ使う?テザー撮影ソフトウェア考察
  5. 9年目で実感した、カメラマンの営業方法

読まれなかった記事ベスト5

  1. 猫の名は
  2. ひとつの怖い夢を出発点に
  3. 部屋から夕焼け
  4. たかが世界の終わり
  5. 言葉を逃した詩人のように

読まれたのはすべて写真・カメラ系記事でした。依然として強しです。随分前に書いたものですが、現在でもオーガニックサーチ(グーグルやヤフーから入ってくる検索)で3000~5000アクセスあります。

読まれなかった記事も今回出してみました。回数は年間で1, 2回から。書いた本人が読んでも、意味不明なものがそろっています。そりゃあ、読まれないわ。

Musée du Louvre

ルーブルの造形

ルーブル美術館は外から見ても、中から見ても美しい。

僕は写真を撮って、現像した後でそのことに気がついた。

広告やクリエイティブというのは、後に表出する制作物こそ美しさを備えてはいるが、制作現場の裏側は以外にダサかったり、カッコ悪かったり、汚かったり泥臭かったりする。映画の美術セットの裏側が、ただのむき出しのベニア板であるように。

出来上がるものが美しく、理にかなっていて、クライアントが満足出来ればそれで良いのだろう。

しかし、ルーブルは外から見ても、中から見ても美しい。

二回言ってしまった。

ルーブル、中から

そして所蔵しているものも、4000年くらい前のものから、1800年代くらいのものまで、幅広く、膨大で、そういうものを創ってきた人間という種族も捨てたものではないと思わせる何かがある。

すべての創作物をきちんと見ようと思ったら、丸4日でも足りないだろう。(合計38万点の作品があるらしい)

元はルーブル城というか、要塞だったため、内部も複雑でその面影が残っていて、ダン・ブラウンダ・ヴィンチ・コードを思い出さないわけにはいかない。

そして僕は、毎回「サモトラケのニケ」を見るだけで、あらゆる過去の殺戮や祈り、破壊と再生、旅立ちと帰路を思い、全身が打ちひしがれて、疲労し満足し、トロカデロのホテルに戻ることになる。

旅には普段35mmを持っていくが、パリはブレッソンのせいか、50mmが多い。この記事の写真はシグマのカメラで撮影している。45mmみたいな、絶妙な焦点距離がどこか愛おしい。

パリにはブレッソンだけでなく、アッジェもいるから、次は大判を持ち込んでみたいとも思っている。