Summicron 35mm ASPH. レビュー

はじめに

今年に入ってズミクロン35mmを使うようになったので、このブログでレビューめいたものを書いてみる。noktonの40mmを買おうか迷った末、ファインダーが合わないのが気になり、気がつけばsummicron 35mmをポチっていた。

ライカで使うレンズはどういうわけか今までずっと50mmだった。レンタルして一時的なテストのために、28mm、35mmはズミルックス含めて試してはきた。しかしフィルム時代のMPでも、デジタルになってのM10-Dでも組み合わせるレンズは50mm一本。それも決まってズミクロン

思えば商業的フォトグラファーを志すようになって、学校を出て初めて買ったレンズもニコンの50mmだった。(FEというフィルムカメラにつけていた)

最初に見たものを「親」と思うヒヨコのように、それ以来僕の中で50mmという焦点距離はひとつの基準というか、基本のようなものになった。

Leica M10-D, Summicron 35mm ASPH.
Leica M10-D, Summicron 35mm ASPH.

35mmという焦点距離

35mmという焦点距離についてはどうだろう。

これも個人的な経験からしか語ることができないのだが、また一つの基本形であることに変わりはない。そしておそらく僕がここ10年間で最も多用してきた焦点距離だ。

写真をはじめて間もない頃、尊敬する写真家の先輩と高円寺の喫茶店で話している時、なにかの流れで彼がJuergen Tellerが主に35mmを使っていることを教えてくれた。(その後機材まで全く同じコンタックスG2を買うことになる)
僕はそれ以来、35mmの魅力に取り憑かれて、ひたすらに35mm判の35mm焦点でいくことになった。もし彼が、ヨーガンに、あるいは写真やカメラについて語ってくれなかったら僕は今頃写真をやってなかったとさえ思う。誇張ではなく。

それくらいに、僕は焦点距離や機材に関して無頓着に写真を撮っていた。当時勤めていた制作会社でもズームレンズが基本だったから、考える余地もなかったのかもしれない。

Leica M10-D, Summicron 35mm ASPH.
Leica M10-D, Summicron 35mm ASPH.

35mmレンズを使う写真家たち

それ以来、35mmの写真家たちを追いかけることになった。

ヨーガンをはじめ、Josef KoudelkaLee Friedlander、Matt StuartやAlex Webb。Ari Marcopoulos、マーク・ボスウィックStephen Shore。それから僕の個展にコメントを寄せてくれた、Bryan Derballa。

荒木経惟、沢渡朔、鈴木親、ヒロミックス、Sandy Kim、奥山由之、笠井爾示、半沢健。

ライカ使いで言えば、瀧本幹也、佐藤健寿、操上和美に藤代冥砂、桑島智輝。(敬称略)
などなど。全て僕の間接的な”先生”たちだ。

挙げればきりがない。それほど使う写真家は多く、普遍的な焦点距離だとも言える。

もちろんここに上げた写真家たちは35mmだけを使うわけではない。だが、35mmで多くの素晴らしい作品を残している。

なにより、35mmは旅の香りがする。そして僕は上に述べたような普段バチバチの商業写真を撮影しているような写真家が、日常や、旅の途中に撮る写真がたまらなく好きだ。ささやかな物語を自分ごとのように感じられるし、35mmというフォーマットには親密性があり、それがとても写真的に伝わるから。

Leica M10-D, Summicron 35mm ASPH.
Leica M10-D, Summicron 35mm ASPH.

現行ズミクロン

現行ズミクロン 35mm
現行ズミクロン 35mm

ライカレンズはその耐久性と同じマウントを使用していることから、50年前のレンズでも今使うことができる。そのためレンズ構成のアップデートにより、何世代、〇〇ジェネレーションといった呼び方をされる。

世代による描写比較、みたいなものは他のブログに任せるとして、ここでは僕が使用している現行のズミクロン35mmについて書く。

現行は世代的には4世代目となり、発売日は1997年。意外と古い。主な構成は変えずに、コーティングや細部をリニューアルして2016年に登場したのが、この「現行」と呼ばれるズミクロンだ。

4年前ということなので、他のメーカー感覚からすると古く感じるかもしれない。しかしライカの場合「レンズにセンサー開発のほうを合わせる」という他とは逆の方法をとっているため、レンズ寿命は遥かに長くなってくる。

個人的にはこの「現行デザイン」が好きだ。50mmも現行を使用している。

このように時代に合わせてデザインされたという解釈を勝手にしています。真相は定かではないけれど。

描写力と使い勝手

見出しをつけておきながら、描写力って、言葉にすることが難しい。

「開放からキレる」と言われればそんな気もしてくるし「絞り込めば隅々までシャープ」と言われればそういう気もしてくる。ボージョレ・ヌーボーが毎年「比較的にだいたい良い」ように、ライカレンズもどこにでもだいたい同じような「良い」ことが書かれている。

何より画像圧縮度合いや、ボディ、閲覧環境によっても大きく変わってくる。だから僕は描写力について述べることをいつも躊躇してしまう。

そして個人的にも「高い描写力」みたいなものを最初から求めていない。それよりも、どこでも持っていけるコンパクトさと、そこそこ写る(と思わせてくれる)感じと、ちょっとやそっとでは壊れない耐久性。正直な話、それがあればどんなレンズでもいい。

でもその条件を満たすレンズというのは案外少ない。Summicron 35mmは見事に満たしている。だから使っている。

ここでは写真をあげることで、その性能の説明に代えさせてください。

Leica M10-D, Summicron 35mm ASPH.
Leica M10-D, Summicron 35mm ASPH.

50mmレンズもそうだけど、引き寄りで標準っぽくも広角っぽくも使える。

Leica M10-D, Summicron 35mm ASPH.
Leica M10-D, Summicron 35mm ASPH.
Leica M10-D, Summicron 35mm ASPH.
Leica M10-D, Summicron 35mm ASPH.

デジタルにおいて「トーン(色味)」はセンサーに左右されることが多いけれど、さすがにセンサー側に寄せてレンズ開発されているだけあって、jpegでサラッと撮影してもなんの違和感もない。ハイライトも心地よく抜けてくる。

snow peak sku
Leica M10-D, Summicron 35mm ASPH.

ブツ撮り。金属表現はズミクロンが得意とするところ。なぜだろうと考えてみたら、それはおそらくシャドーが良い締まり方をするからだろう。

Leica M10-D, Summicron 35mm ASPH.
Leica M10-D, Summicron 35mm ASPH.
Leica M10-D, Summicron 35mm ASPH.
Leica M10-D, Summicron 35mm ASPH.

コンパクトだと毎日持ち歩ける。持ち歩けるとストリートでブツ撮りができる笑。

35mmは金属製のはめ込み式レンズフードが純正で付いている。僕は取り回しやすさの観点から、フードなし、リング付けで持ち歩くことが多い。そうするとズミクロンの50mmよりもコンパクトな撮影システムができあがる。

Leica M10-D, Summicron 35mm ASPH.
Leica M10-D, Summicron 35mm ASPH.
Leica M10-D, Summicron 35mm ASPH.
Leica M10-D, Summicron 35mm ASPH.
Leica M10-D, Summicron 35mm ASPH.
Leica M10-D, Summicron 35mm ASPH.
Leica M10-D, Summicron 35mm ASPH.
Leica M10-D, Summicron 35mm ASPH.

山でも、街でも、旅行でもオールラウンドに使える。風景写真のように50mmだと少し窮屈さを感じる場面でも、35mmならなんとか上手くまとまる。そして一眼レフのように移動の妨げにならない。

Leica M10-D, Summicron 35mm ASPH.
Leica M10-D, Summicron 35mm ASPH.
Leica M10-D, Summicron 35mm ASPH.
Leica M10-D, Summicron 35mm ASPH.

花のような身近なものを撮るのに、35mmほど適した焦点距離は無いだろう。昔のコンパクトフィルムカメラによく使われていたことを考えれば納得だ。

最短撮影距離はライカ標準の70cmだが、引いても寄っても心地よい。マクロで撮れないもどかしさも、時にはそれがレンジファインダーライクな味となる。

Leica M10-D, Summicron 35mm ASPH.
Leica M10-D, Summicron 35mm ASPH.

人生をドキュメントするにあたり、僕は50mmと35mmがあればもう何もいらないと思うようになった。そういう意味では、50mmでも35mmでもどちらでも良いはずだ。
しかし、35mmで譲れないところがひとつある。それは飲み会での向かいの席を撮れるということだ。50mmだとどうしてもひとりにフォーカスされてしまい難しい。35mmは上手く収まるし、とっさの集合写真にも対応できる。そこが好きだ。

テクニカルデータ

summicron 35mm ASPH
summicron 35mm ASPH  Amazonで購入
レンズ構成5群7枚
距離計連動範囲∞〜0.7
フィルター径E39

絞り
設定方式 :クリックストップ(1/2段ステップ)
最小絞り :F16
絞り羽根 :11枚
バヨネット :ライカMバヨネット方式
レンズフード :ねじ込み式

寸法/重量
長さ :約35.7/54.4mm(レンズフードなし/装着時)
最大径 :約53mm(レンズフードなし)
質量 :約252g/287g(レンズフードなし/装着時)

まとめ

よく「無人島に一本だけもっていけるなら、どのレンズを選ぶか」という話をしたりする。

実はこの問いは、非現実的なものではなくて、撮影者にとっては考えるべき命題ではないかと思うのだ。

なぜなら身体ひとつで撮影している時は、一本のレンズしか使えないからである。もちろんズームレンズを使えば、あらゆる焦点距離を一本で自在にコントロールできるようになる。

しかし持ち運べるコンパクトさやカメラと一体化して写真を撮る歓びは、一本を決めたときに体感としてもたらされるものだ。焦点距離を決めることは写真家の意思表示ともなり、スタイルになりうる。

好みの焦点距離と出会った時、家でも、いつもの街でも、そこは冒険できる無人島と化す。お気に入りのレンズをみつけて、それぞれの冒険を楽しんでほしいと願う。ただし、レンズ沼だけには落ちないように笑

leicam10-d

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Leica M10-D のすべて

窓に向かって話すように

Tochigi, Japan 2012

こんにちは、ときまるです。

コロナの影響で、街に人が少ないです。そして学生が多いような気がします。

多くの企業で在宅ワークやテレワークが実施され、イベントやライブにも中止要請が出されています。

薬局からはマスクが消え、次いでトイレットペーパーが消えました。まるでオイルショックのようで昭和かよ、と思いましたが、いいえ、令和でした。

僕の予想では、次はコンドームが消えると思います。なぜならみんなが家に引きこもっているわけですからね。

ミーティングや打ち合わせもオンライン上で行われることが多くなり、PCのディスプレイに向かって話す機会が増えました。先日は仕事でとある発表をする機会があり、大きなホールで誰もいない客席に向かって語りかけました。とても虚しかったです。

ディスプレイや誰もいない客席に向かって話かけるのは、暖簾に腕押し、あるいは豆腐に踵落としでしょうか。前に発したエネルギーが、どこにも行き場が無いのです。

それはまるで窓に向かって話すように。

突然写真の話になりますが、ジョン・シャーカフスキーというMoMAのキュレーターが1978年に「Mirrors and Windows(鏡と窓)」という展覧会を開催しました。

写真に詳しい人であれば知っていると思います。この展示を機に、写真が現代美術の領域に一歩踏み出すことになりました。写真史的にもタームポイントとなる展覧会でした。

展覧会カタログ↓

内容はその名の通り、当時の写真家を「鏡と窓」に分類して展示するというものでした。

自分の内面を知るために使われる写真は”鏡”

外で起きていることを知るための写真は”窓”

という分け方です。

分けるのは良くないとか、作家の意図に反して分けられたとか、当時は様々な批判があったようです。

しかしジョンシャーカフスキーはとりあえず、アンセル・アダムスやナン・ゴールディンやその他の作家をとりあえず分けたのです。

当時は理解されなかった分類だったのかもしれませんが、今ではわかりやすい分け方だと思います。

確かに写真家には、自分の中に中に入っていくタイプの人と、ひたすら外への興味で写真を撮る人がいますから。

PCのディスプレイは鏡と窓、両方の役割を果たすのかもしれません。

つまり、テレカンやオンラインで誰かとコミュニケーションをとっている時はそれは窓となり、今このようにブログなどを書いている時は鏡となるのかもしれません。(読者に向けて書いているという意味では、窓なのかもしれませんが)

なるほど、WindowsというOSは、そういうことだったのかと、今書いていて腑に落ちたところで、窓の写真をいくつか掲載して今回は終わりにしようと思います。

いつものようにライトルームのAI(アドビ先生)に過去の写真数万枚の中から windowというキーワードで選んでもらったのですが、僕はどうやらいたるところで窓を撮っていたようです。自分でも忘れていました。不思議なものです。

Tochigi, Japan 2012
Tochigi, Japan 2012
Nagano, Japan 2013
Nagano, Japan 2013
Bali 2012
Bali 2012
Tokyo 2017
Tokyo 2017
Kyoto 2014
Kyoto 2014
Miyazaki, Japan 2012
Miyazaki, Japan 2012
Osaka 2012
Osaka 2012
HongKong 2019
HongKong 2019

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Musée du Louvre

ルーブルの造形

ルーブル美術館は外から見ても、中から見ても美しい。

僕は写真を撮って、現像した後でそのことに気がついた。

広告やクリエイティブというのは、後に表出する制作物こそ美しさを備えてはいるが、制作現場の裏側は以外にダサかったり、カッコ悪かったり、汚かったり泥臭かったりする。映画の美術セットの裏側が、ただのむき出しのベニア板であるように。

出来上がるものが美しく、理にかなっていて、クライアントが満足出来ればそれで良いのだろう。

しかし、ルーブルは外から見ても、中から見ても美しい。

二回言ってしまった。

ルーブル、中から

そして所蔵しているものも、4000年くらい前のものから、1800年代くらいのものまで、幅広く、膨大で、そういうものを創ってきた人間という種族も捨てたものではないと思わせる何かがある。

すべての創作物をきちんと見ようと思ったら、丸4日でも足りないだろう。(合計38万点の作品があるらしい)

元はルーブル城というか、要塞だったため、内部も複雑でその面影が残っていて、ダン・ブラウンダ・ヴィンチ・コードを思い出さないわけにはいかない。

そして僕は、毎回「サモトラケのニケ」を見るだけで、あらゆる過去の殺戮や祈り、破壊と再生、旅立ちと帰路を思い、全身が打ちひしがれて、疲労し満足し、トロカデロのホテルに戻ることになる。

旅には普段35mmを持っていくが、パリはブレッソンのせいか、50mmが多い。この記事の写真はシグマのカメラで撮影している。45mmみたいな、絶妙な焦点距離がどこか愛おしい。

パリにはブレッソンだけでなく、アッジェもいるから、次は大判を持ち込んでみたいとも思っている。