Tag: Summicron 50mm
ズミクロンについて
All about Summicron 50mm
ライカと言えばエルマーとズミクロン。これについては多くで語られているので、僕が新たに語るべきことは何もないように思える。
それにしては随分背伸びしたタイトルで、個人的な経験からその魅力を少しでも描き出せるように。
フィルム時代は2ndを使っていたが、今回M10-Dにアップデートするにあたり、ズミクロンも新型にしてみた。
新型といっても現行は1994年の発売。僕がロックさえも聞いていない、米米CLUBやシャ乱Qやモーニング娘。の古き良き時代の製品だ。
光学設計は1979年から変わっていない。そんなレンズが2020年のデジタルカメラで難なく使えてしまうのが驚きである。それは描写性の回でも述べたように、センサーのほうをレンズに合わせて開発しているからこそなせる業なのだろう。
50mmと言えば、標準レンズのド定番。引けば広角的にも使え、寄れば圧縮感も表現できる。逆に、人間の視覚に近いので、一見面白味に欠ける画角でもある。
開放からキレる。F4まで絞れば、周辺も解像感も十分だ。

中口径、高画質、小型で軽量という、バランス感が良い。重さは240グラム。
描写はリアリティにあふれて、シリアスな印象もある。都市のドキュメンタリーに相応しいけれど、自然や有機物も写る。

柔らかな雰囲気のポートレートから、鋼鉄多めの建築写真までいけるオールマイティさがある。
思いつくままに印象を書いてみた。正直に言うと、これ一本で良いんじゃないかと思っている。
デイリーユースの画角を、50mmと35mmで迷っている人は多いように思う。フォトグラファーの永遠の課題と言っても良い。
両方経験すれば好みがわかってくるので、好きな方を使えば良いと思う。

最初の一本を選ぶなら、今なら僕は50mmをおすすめする。
カメラを始めたばかりの人なら、ボケ感がしっかり出るから。
そして広角側は誰もが持っているiPhoneで撮れるから。(iPhoneの画角は28mmくらい)
だから、50mmを使うことで、iPhone写真と差別化できる。使い分けもできる。
描写に関しては、いくら文章で云々書いても伝わらない。
どのレンズにも言えることだが、自分で使って撮ってみるのが最も手っ取り早い。ただ写真から感じるしかない。
Leica M10-D のすべてにもどる
たったひとつのカメラ
Just one Leica
最近はライカ1台と50mmレンズ一本で、写真している。
これまで多くの機材やカメラを使ってきたけれど、保管庫もカメラバッグもすべて処分してしまった。残ったものは一台のライカだけで、それは常に作業デスクの上が定位置で、首からぶら下げたりして持ち歩いている。
依頼された仕事でも使えれば使い、日常の記録も、パーソナルなプロジェクトも全てこれ一台で行っている。
哲学者の千葉雅也さんが、有限化について述べている。
喫茶店にいくと、そこに永遠にいるわけにはいかない。いつかはお店を出なければならないという制限がかかる。その中で一定のタスクを仕上げなきゃいけないという暗黙の圧によって作業が進むんです。喫茶店に行くというだけで、すごく大きな意味でポモドーロテクニックが起動する。
千葉雅也 – 書くための名前のない技術
カフェで作業や物書きをすると、なぜか捗るという経験は、小説家でなくてもあるだろう。カフェに永遠にいることはできない。店はいつか閉まるし、座りすぎてお尻が痛くなることもあるし、お腹がすいてラーメンを食べたくなる時だってある。そのような制限が強制的に働くおかげで、作業に集中することができる。
カメラを一つしか所有しないことも有限化だ。
写真を始めたばかりの人が、多機能なカメラや、多くのレンズ(ズームレンズも)を最初から使うと、どれをどのように使えばよいのか、使い方に迷うことがある。使い方に迷っているうちに、撮りたい瞬間を逃したり、条件下で最適なパフォーマンスを発揮できなくなる。
ただ押すだけで良い”写ルンです”は有限化の極地だ。何も考えずただ押せば良いので、そのぶん瞬間や被写体に集中できる。
カメラとレンズが1つしかないと、様々な段階で迷いがなくなる。依頼された仕事もそれ一台でどのように取り組むべきかを考え、あとは光と環境と状況を読むことに集中できる。
写真は選択で成り立っている。被写体を選んで、カメラを選んで、レンズを選んで、焦点距離を選んで、絞りやシャッタースピードを選んで、ピント位置を選んで、構図を選んで、タイミングを選んで、一枚が撮影される。撮影された後の編集のプロセスも、無限の選択可能性に満ちている。(ソフトは、パラメータは、トリミングは…)最も重要なセレクトは、選択そのものだ。
一台のカメラを使うことは、それらの選択を含めて有限化することである。
ライカを選んだ理由はnoteに余地を残しておくとして、ここでは一つ、”小さいこと”を上げておこう。
一日は無数の瞬間で成り立っている。この瞬間のほとんどはすぐに忘れ去られるが、稀に永遠に記憶されるようなタイミングが訪れることがある。どの瞬間が残るのかは、後にならないとわからない。だから常にカメラを持ち歩く必要がある。
小さくてどこへでも持ち歩けると、まだ見知らぬ人や景色に出会う機会が多くなる。ただ人生を記録するだけでなく、カメラを介して人と出会うことで人生は豊かになる。
コンパクトで耐久性があり、よく写るカメラが一台あれば、他には何もいらない。
あとは「いつでもどこでも良い写真が撮れるはずだ」という気分と、ハンドクリームくらいあればいい。
鋸山
街から海へ、海から山へ、そして山からまた街へ。
フォーカスが速い、ということ
フォーカスが速いということは、どういうことだろう。