はじめて体温計を買う

昨日から38度の熱が出てずっと寝込んでいた。オミクロンを疑ったけど「すごい寝汗」の症状がなく多分違う。となると、インフルエンザかノロウィルスか。熱が急に上がる時はウィルス性でインフルの場合が多いと、かかりつけ医にいつも言われていたので、そんなことを考えながらも何もする気も起きずただ苦しみながらベッドに横になっていた。寝ようにも複合的な苦しみで寝られないし。途中でバファリンをひとつ入れて、浅く寝たり起きたりをずっと朝まで繰り返していた。

朝になって熱は37度まで下がったけど倦怠感は抜けない。そのままベッドでじっとしていて、ようやく起きて動き出した頃には空はもう暗くなっていた。

30時間ぶりの食事が神のように思えた。寝込んだのは3年ぶりくらいで、たまには寝込むのもいいなと思った。カフェインも酒も一切入れてないし仕事もしてないし誰とも連絡をとっていないからたぶんデトックス的なことにもなっている。

久々に身体の中で痛みや悪寒という他者に遭遇した。それが自分のものだとは考えられないくらいに、不調は他者性をもって一晩中そこにいた。

数日前に編集長から、あなたはこの10年間仕事をし過ぎたからもっとゆっくりすべきと言われた言葉を信じ、来年はスローダウンの年にしようと思った。確かに2011年からの10年間はずっと写真漬けだったし、ここ3年は写真に加えて色んなことをやってしまったおかげで1週間の休暇みたいなものを取ったこともない。

家に体温計が無かったので詰んだと思った。仕事関係者に報告するにも、病院に受診を頼もうにも「熱があるので」と言わなければならない。この圧倒的な悪寒だけで熱があるとは自分に対しても証明できない。特にコロナ時代では何度以上が何日続けばどこどこで何々、というような昔やったロールプレイングゲームの最初の街でのミッションくらいクリアしなければならない工数がある。そうしないと医療機関さえ受診できないのだ。

ミニマリストなのでもちろん体温計など持っているわけがない。朦朧とした頭で色々考えた。体温計を誰かに持ってきてもらうか、近くのルイ・ヴィトンかマルニか検温機のある店に買い物するフリして測りにいくか、でもだったらそのまま薬局に買いにいけるなとか。結局近くの薬局で買ってきて測った。計測に5分くらいかかるやつが980円で、15秒で測れるやつが2倍の1980円した。15秒で測れるやつにした。それで全てが終わったような気がして、全てが面倒になってずっと寝ていた。

ちょうど千葉雅也と國分功一郎の「言語が消滅する前に」を読んでいてその中で、何にでもエビデンスが求められるエビデンシャリズムについての話があって、体温の提出も体調の言語化を放棄して記号に頼るエビデンシャルなものだと思った。だけど体温や、極地での気温などは命を守るための外的な指標として必要なものなのだろう。

風呂に入ろうか入るまいか迷っている。

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