旅での消費と移動での生産

旅をしていると普段自分がいかにマスに対してのコミュニケーションを行なっているかがわかる。そこにはインタラクティブネスはあまり介在せず一方的なアウトプットだけがある。対外的なコミュニケーションに見えて実は内向的で内省的な運動なのである。旅はインプットに主軸が置かれアウトプットは疎外される。その代わり帯同者とのクローズドなコミュニケーションが生まれる、端的にいえば対話が浮き彫りになる。旅は消費であり浪費である。だが移動することは生産でもある。どこでもある程度仕事ができてしまう状況になり、おそらくそのような浪費と生産のバランスを重視していて、移動することでより生産できるような体制を目指しているかのようである。その時、旅と日常の境界は消え、ハレとケの区別も消え、時間と場所だけが残る。その姿はスナップ写真のようである。旅と日常が融和する時に生まれる空間的擦過は、写真にしなくてもスナップ写真的に、それはおそらく記憶のようなものとして存在する。

ここまで書いてから札幌ドーミーインのチェックアウト時刻となった。部屋でWi-Fi速度を計測してみると590Mbps出ていて、東京のオフィスなんかよりも全然早い。露天風呂も加湿器も夜鳴きそばもあるし一人で滞在してワーケーションするには最高の宿ではないか。A先生と札幌駅から列車に乗って、サッポロクラシックを飲みながら空港まで向かう。朝時間で集中して行う仕事と風呂の後だから妙に染みた。旅の終わりが近づいていることもあったのだろう。新千歳空港でそれぞれお土産を買ってフライトを待つあいだ、残っていた地ビールとレモンサワーを飲んだ。手に入れた酒は現地で全て消費していくスタイル、これがYAKARAH。次の旅をゆるく構想して別れ、AIRDO機内、佐藤水産で購めておいた空港オリジナルいくら醤油漬けを、ウニと蟹弁当にかけて食べる。北海道を引きずったまま羽田にランディングする頃、東京タワーとスカイツリーが太陽にライティングされた不思議な光景が窓の外に見えた。何処か知らない別の場所に着陸したようだった。

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