最近の読書から。
「戦場カメラマンの仕事術」渡部陽一
そのキャラクターも相まって、メディアへの露出で一躍有名カメラマンとなった渡部陽一さん。
だがそこに至るまでには、血と汗と涙の努力がありました。深夜にもできるバナナの積み込みのバイトを毎日こなして、海外に飛べる資金が貯まったら戦場に入り写真を撮る。そしてまた日本に返ってきたらお金を貯めるために、ひたすらバナナの積み込みを。
地道な努力を「石の上にも15年」コツコツと積み重ねるやり方です。
戦場という地上で最もエクストリームなフィールドで写真を撮る為に、どのように準備をし、どのように現場に入り、どのように生きて還ってくるのか。安全に良い取材をするには”良いチームを編成することから”だと書かれています。宗教・人種、まるでハリウッド映画のようなバランスで、人員を配することで生存可能性は上がる。そのような実践的な内容も書かれています。アフリカのジャングルを一週間かけて抜けて、仲間に裏切られ、機材も何もかも盗まれ、マラリアにかかるエピソードも。
そのようなハードな取材を繰り返す中で、結婚し、子供ができて、撮る写真も変わっていく。イラクやシリアで生きる家族や子どもたちのことをより深く考えるようになり、彼らの笑顔を取り戻す為に動くようになる。
後半はジャーナリスト先輩方との対談形式となっていますが、その中で共通して語られることが「喋り方も仕事の姿勢も、メディアに出てもずっと変わらない」ということ。
また、渡部さんは言葉を大切にされる方なんだということもわかりました。読書家でもあり、フィールドには必ずノートを持っていって、その時の気持ちや状況を日記のように記し続けているそうです。
写真にも自分にも絶対に嘘はつかず、真摯に現実と向き合い続けてきた渡部陽一さんの伝記的一冊。
東京に生きるカメラマンの僕が、僕たちが、どんなにヌルい環境にいるのか改めて思い知らされました。
戦場のような現場もあるかもしれないけれど、実際の戦場じゃないんだからもっとやれる、まだまだやれる。
姿勢を正されたような気持ちです。
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