
生まれてこのかた、栃木に行こうと思ったことはないです。

人がどんな時に、栃木に行こうと思うのかもわからない。こう言うと栃木県民にとても失礼に聞こえるかもしれないけれど。(栃木出身の友人は東京に何人かいて、餃子とかをお土産にもらったことがある。とてもいいヤツだ)

しかし7月の終わり、今にも雨が振りそうな朝に、栃木に行こうと思いついた。

人が栃木に行こうと思う時は、自粛中の今にも雨が振りそうな夏の日の朝なのかもしれない。

気がつけば栃木行きの特急列車に乗っていた。

列車の中で栃木について調べていたら、「夕顔ラーメン」というご当地ラーメンがあるらしいことに行き当たった。

グーグルがはじき出したその写真を見て、旅の目的は決まった。写真を撮っているくせに、すぐに写真に影響される、写真に弱いやつなのだ。

夕顔ラーメンはその名の通り、夕顔が原料として作られるらしい。かんぴょうの原料は夕顔の果実だということだが、夕顔の果実というものがどういうものか想像もできなかった。

栃木県は日本のかんぴょう生産の8割以上を占めている。そのかんぴょうの原料は夕顔の果実である。夕顔ラーメンの麺は、夕顔の果実の粉を練り込んで作られており、喉越しと食感の良さが特徴となっている
夕顔ラーメン wikipedia

駅から少し歩いたところにある「長栄軒」に入った。観光客らしき客が他にも数組、テーブルに座っていた。コロナ対策としてテーブルは向かい合って座れないようになっていた。だから片側にみんなが同じ方向を向いて座り、ラーメンを啜っていた。その光景は僕を奇妙な気持ちにさせた。

情報どおり、夕顔の果実を練り込まれた麺の”のどごし”はつるっつるだった。一般的な玉子麺、うどんや蕎麦とも、素麺とも異なる食感で、今まで食べた地球上の全ての麺類ののどごしを遥かに超越していた。

チャーハンは少し甘めだったけど、全体的においしかったです。

たぶんしばらくは栃木を訪れることはないだろう。

だけど今後の人生で、自粛中の今にも雨が振りそうな夏の日の朝は、夕顔ラーメンのことを考えるかもしれない。




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